赤い本、青い本

洪水ちゃんは、元気に廊下を走っている、らしい。だだだだだっと走ってくる洪水ちゃんをよけた女の子が、別の子から、洪水ちゃんを嫌って避けた、と思われて、先生に呼ばれて、事情を聞かれて、それは誤解だと弁明したらしい。だってよけないとぶつかりそうだったから。

うちの息子は、だだだだだっと走ってくる洪水ちゃんをよけられなくて、ぶつかって転んでしまったらしい。洪水ちゃんはまわりが見えないので、まわりが気をつけるよりしょうがないが、うちの息子も、まわりの見えない子だからな。気づくのが遅れて、よけそこなった。

その洪水ちゃんが、「うちにあるのと同じ本を読んでる」と息子。
「自閉っ子、こんなふうにできてます」だっけかな、そういう本。息子は小学校のときに、本棚から引っ張り出して読んでいた。私は読みかけて、たぶん、途中までしか読んでないと思う。
つまり、洪水ちゃんがそういう本を読んでいる。
「子どもたちは、自分で自分の特性を理解して、意識してスキルを身につけていくという考え方で、やっていくのがいいと思います」というような話を、夏に、洪水ちゃんのお父さんとしたなあ、と思い出す。

いいことだよ、と言うと、「でも洪水ちゃん、休み時間だけじゃなくて、授業中も読んでいて、叱られている」と言う。それくらいは私もしたよ、と言うと、息子は驚いている。彼は、授業中に教科書以外の本を読むなんてことは、こわくてできない子なのだ。
ノートに電車の絵を画く、ぐらいのことはするけど。

それで、ぼくもその本読んだ、とか話しかけたりはしないのであって、
まして、そういう類の本を自分が学校で読むなんてできないのであって、
でも、洪水ちゃんのことは観察している。
「昨日は赤い本だったけど、今日は青い本だった。」
それは続編だね。読むのはやいね。

洪水ちゃん、がんばれ。