星ヶ丘ゆき

kazumiの日常雑記

罵倒観音

中学生になって間もない頃、体の大きな女子たちが、誰が好きか、としつこく訊いてくるのにはうんざりだと、息子は言っていたが、そういう話に溺れていくのは女子だけでもなかったらしい。
ミッキーが、とある女の子に、息子のことをどう思うかと、誰もたのんでもいないのに聞いたのは冬休み以前の話で、そのとき彼女は、タイプじゃない、と答えた。
ミッキーは、息子が彼女を好きだろうと勝手に詮索して、余計なことをしたのだが、話はそれで終わっていたのである。

なのに数日前、ミッキーはまた彼女に、息子のことをどう思うかと聞いたらしく、すると彼女は、大嫌いと答えた。何かいやだし、気持ち悪いし、ナルシストだと思うし、声ききたくないし顔見たくないし、関心もちたくないし、雑草みたいなもんだから、告ったりしないように言っといて、……みたいなことを言った。
ということを、ミッキーは息子に伝えて、彼女はほんとにきみのことを嫌いだと思うよ、などと言った。
それをミッキーがわりと大きな声で喋るもんだから、まわりの誰彼が知ることになり、息子は「失恋野郎」などと言われた。

息子としては、ぼくは彼女に何もしていない、ほとんど話もしていない、それがなぜ、そうも罵倒されなければならないのか、なぜ突然「失恋野郎」にされて、なぐさめられたり、ばかにされたりしているのか、わけがわからない。わけがわからないけど、傷ついてしまってしょんぼり。

だからミッキーなんかと仲良くするんじゃないよ、と言ったのに。
いい餌食にされてしまったな。
なんというか、「ゲスの極ミッキー」だよ。しかも悪いことに、ミッキーは自分が悪いことしたとは絶対思ってない。
彼女の気持ちを聞いてくれとか一言も頼んでないことを自分の思い込みで勝手にやって、しつこくやって、めちゃくちゃな罵倒を聞いたり言いふらしたりした上で、なお、
「はやく告れよ」と息子をそそのかしているというのだから、
あきれるけど。
ああ、でも、そういうやつは、男女問わず、いるよなあ。大人になってからも出会うよ。
上手に距離をとらないと、ひどい目に遭うよ。
ほんとそれ「ゲスの極ミッキー」だから。あだ名つけてやった。

彼女のあまりの罵倒ぶりについて、男子たちは、「意外と毒舌」とか「わりとゲスだな」とか「明るく見えるけど腹黒いのな」とか言っていたらしい。
「罵倒観音」というあだ名はパパがつけた。

ことここにいたっては、あれはミッキーが面白がって勝手にやったことだと言ったって、どうにもなりそうもない。いろんなところに誤解がありそうだけど、めんどくさいしばかばかしいし。

「ゲスの極ミッキー」の話に群がった男子らのなかで、話の内容がわからない男子が「ぼくだけ知らないなんて子ども扱いされてるみたいじゃないか」と言うので、息子は言ったらしい。「他人のプライベートなところに興味本位で踏み込んでひっかきまわすという悪い遊びだよ」。傷つきながらも、なかなか冷静。

でも、こういうことあると、まわりの男子女子のそれぞれの本性みたいのがはっきり見えるでしょ、って言うと「うん」って言う。こいついいやつだなっていう男子が、何人かいた。(オトちゃんという男の子は、「きみがそんなこと言われるなんて信じられない」って言ってくれたらしく、その純真さ加減には私が驚いた。)
間違っても「罵倒観音」を(かわいい顔にだまされて)好きにならずにすむし。悪口は、言われるほうより言うほうにもっとあてはまるから、気にしない。「罵倒観音」に罵倒されたからって、友だちがいなくなるわけでもないでしょ。

私がもし同級生の女の子で、きみとお付き合いしたいかと考えると、わかんないけど。