紙を食べる鹿

最近、Fがきれやすい。それで息子の首を絞めてきたりする。暴力はやめろと言うと、「暴力じゃないし、おまえのせいだし」と言う。
それで、パパが思い当たった。

たとえば、Yくんに対して、おまえは思ったことの4分の1も言わないだろう。それは、Yくんの気持ちがわかるからだよ。傷つけるだろうなとわかるから。
ママに何か言われて、むかつくことあるだろう。ぼくの気持ちもわからないで、ということあるよな。そういうことをおまえはFに対してやってるかもしれないよ。思ったことを全部しゃべるな。3割でいい。あとは黙っておけ。そういう話をしていた。

息子、すこし何かわかったようだった。

そういえば、小学校最後のなわとび大会のときに、学級崩壊しているクラスについて、学級崩壊してるから団結できないし、勝てないんじゃないの、と言って、そのクラスの学級崩壊原因男子らの怒りをかって、こわい思いをしたことがあるなあ。
そういうことを私は思い出した。そのクラス、授業は学級崩壊でも、なわとびは崩壊せず、優勝してたけどね。

うっかり地雷を踏む。でも何が地雷かわからない。相手の気持ちの問題だし、気持ちは見えないし。息子、乱暴しないし、悪口陰口言わないし、バカとかしねとかも言わないし、だから自分では、なんで人が怒るのか、さっぱりわかんないんだろうが、たしかに、このクソチビに上から目線で物言われたら、むかつく向きもあろうというものだ。

洪水ちゃんみたいに、思ったこと10割ダダ漏れだと、まわりもそういうもんだと思って対処するから、感情の問題にならないけど。
話すこと話さないことの見分け方は、難しいよなあ。

チビでよかったんだよ、とパパが言った。
本当は、友達関係のこういう経験は、Yくんにさせてやりたい。Yくんは背も高いし、頭もよすぎるから、みんなが距離をおいてしまって、孤独だ。うちの子は、チビだし、天才でもないから、同級生がかまってくれる。きらわれてはいないんだろう。いろいろともまれているうちに、わかってくることもある。成長したら、人間相手の仕事も、人を助けることもできるようになるよ。クラスには洪水ちゃんもいるし、電車の話のできる先輩もいるし、こいつは、信じられないほど恵まれている。

何かある度に、絶交していいよと母は簡単にそそのかすのだが、そうしない。それは何か違う気がする、と感じるらしい。何か違う気がする、と感じる分だけ、そこには、もしかしたら、友情のようなものが、あるのかもしれないな。



日曜日、横浜から広島に遊びに来ていた友人一家と、私と息子と宮島へ。
鹿がやってきて、ポケットに突っ込んでいた地図をくわえて、食べはじめた。本当に食べるんだなあ、全部食べちゃった。
楽しかった。宮島は1年ぶりかな。いろいろと思い出が増えてゆくなあと思う。思い出の地層の上を歩いているような気がする島になった。

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