青春18きっぷは1枚で5日使える。九州旅行でそれぞれ4日分使ったので、あと1日鈍行列車乗り放題ができる。
それで、来年の春には廃線になる三江線に乗りにゆくことにした。私と息子と。
8日土曜日早朝、また始発の電車でスタート。可部線、山陽線、山口線で、益田に出る。山陰線で江津にたどりつき、午後3時過ぎに江津発の三江線に乗る。そのあと芸備線可部線で、もよりの駅に帰り着くのが、夜10時前。
雨上がりの曇天。山口線沿いの田園風景は毎年帰省するのでずいぶん見慣れたものになったけど。中国山地の家々は屋根瓦が赤い。それが緑のなかで、きれいだ。
日本海は、穏やかなときも、それなりに凄みがある。瀬戸内海に慣れた私の目は、すこし緊張する。
三江線は二両編成。たぶんいつもは一両編成。渓流沿いの路線で、お花見の時期の週末。カメラをもったおじさんたちおにいさんたちが1ダースくらいはいたんじゃないかしら。
ときどき座席を離れて、運転手の横に立ちたい息子だが、そのあたりおじさんたちおにいさんたちが陣取っていて、入り込めない。その後ろの隅っこにつつましく立ち、写真もあんまり撮れないから、ディーゼルの音の収録を頑張った、らしい。……この趣味は謎よ。
途中の駅で、どこかに遊びに行った帰りのおばあさんたちが1ダースほど乗ってきて、にぎやかにおしゃべりする。息子は席をおばあさんたちに快く譲ってあげて、あとは運転手の横のおじさんたちおにいさんたちの後ろにずっと立っていた。
窓を桜が走ってゆく度、「まあ、きれい」とおばあさんたちが声をあげる、そのほうを、右見たり左見たりしながら過ぎてゆく。
今年のお花見は、走る桜だ。
宇都井駅は山のなかのトンネルとトンネルを繋いだ高架上にある。地上20m、ホームが日本一高い場所にある駅だと、地図をもって三江線を往復しているおじさんが、おばあさんたちに教えてあげる。「あともうすこしですよ」。
宇都井駅から撮った写真。
山口線も三江線も、桜の隙間には、車両を撮ろうとするおじさんたちおにいさんたち(圧倒的に男の人たち)が点々と立っていた。
帰ってきたら、体もずっとゆれているようなんだけど、めまいがして、立っていられないほどだった。寝たらなおったけど。列車にゆられ過ぎと思う。昨日今日、すばらしい筋肉痛。
帰りの途中の駅で、息子は同級生の男子に会った。彼は塾帰りなんだって。にわかに現実に引き戻された感じだったけど。
でも帰ったあともずっと、電車の写真を見たり音を聞いたりしていた。今日から春休み明けの試験だけど、春休み、勉強どころではなかったね。