旅の理由

台所の掃除にとりかかる。カーテンも洗う。籠に入れといたジャガイモの芽が出ているので、畑に植えに行く。何もしなければ何もしないですむのに、はじめると、次から次へと仕事が増えるなあ。年に一度の大掃除をはじめてしまった。(そしてたぶん途中で息切れする)。

「他人をほめる人けなす人」という本があって、ずっと以前ブックオフで100円で買ったかなと思うんだけど、読んだ記憶はあるけど内容は記憶していない、それを息子が引っぱり出して読んでいる。読みながら、1年のとき同級生だったFのことを考えたりするそうだ。Fは人をけなす少年だったから。
「仲良くなる、一緒に遊ぶ、でも、そのあとは、もううまくいかなくなるんだ」
まあ、そういうこともあるかもしれない。一緒に遊ぶと、相手のことがよくわかるようになるからね、お互いに。うまくいかない相手とはうまくいかないってことがはっきりするんだと思うよ。きみは、わりとそういうことが続いているかもね。

「大学生になったら、アルバイトをしようと思う」と言う。
お金をためて、いつでも旅に出ることができるようにしておきたいと言うのだが、その理由が。

「人間関係がうまくいかないとか、ほらFみたいなのとまた出会ってしまったりするかもしれないし、それから失恋するとか、論文がうまく書けないとか、そういうときに、青春18きっぷで、どこか遠くまで行くといいと思う。九州に行って、あれくらいの旅なら3万円くらいでできるとわかったし。ぼくは遠くまでひとりで旅したい。」

まず失敗したときのことを考えるって、用意周到というべきなのかな。
友だちをつくったり、恋愛したり、どんな論文を書きたいかを考えたり。まずそういうことを考えて、ドキドキしてほしいけど、彼は、そのあとの旅のことを考えて、ドキドキするわけだ。

うまくいってもいかなくても、旅は、いいと思うよ。
高校を卒業するまでは、母を一緒に連れていってやってもいいそうなので(連れていくほかないのだが)、連れていってもらおうか。