朝焼け

詩人への憧れは、どういうわけだったかなあと考えたら、
幸せについて、誰よりもよく知っているのが詩人だと、思ったからかもしれない。

 夢見たものはひとつの幸福……

立原道造の詩を読んだのは中学1年の頃で、どきどきしながら、おぼえた。あのころ暮らしていた田舎の春の景色を思い出して、それがとても幸福なものに思えるのは、道造の詩の功徳があると思う。
そして、あの景色が私のなかにあるからには、私は大丈夫だと、思うのだ。

こないだ読み返していたエミリ・ディキンスンの詩。(中島完訳)

 私は荒野を見たことがない
 海を見たこともない
 だがヒースがどんなに茂り
 波がどんなものかも知っている

 私は神様と話したことがない
 天国に行ったこともない
 だが私にはきっとその場所がわかる
 まるで切符をもらったように


心のリハビリには、詩を読むのがいい。そのような詩のアンソロジーを心に持っていられたら幸せだ。
リハビリついでに、毎日、感謝したいことを見つけてみようと思った。
そう思ったら、数えきれないほどある。たった数分の間にも両手両足の指の数で足りないほど。
早朝、鳥が鳴いていたこと。朝焼けがきれいだったこと。Cimg7843