トルコ行進曲と瑞風

日曜日。息子のピアノ。ピティナステップ。演奏して、先生方から講評をいただくというもの。トルコ行進曲モーツァルト)と子犬のワルツ(ショパン)を弾いていた。

幼稚園の頃に、トムとジェリーのアニメが好きで、トムとジェリーが弾いていたトルコ行進曲を、届かない指で弾いてみたのが、小学校1、2年生の頃。トムとジェリーの顔して、上機嫌で弾いていた。楽しそうで、得意そうで。

幼稚園の片隅で、耳をふさいでしゃがみこんで「ぼく、むりなの」と動こうとしなかった子が、少しずつ手足を伸ばしていろいろできるようになって、
自信もできて、幸福感いっぱいで弾いていたのが、トルコ行進曲だった。その頃のことを思い出した。ほんとにトムとジェリーの顔してたんだよ。

あのあと、学級崩壊があって、いじめがあって、子どもの顔から無邪気な喜びが消えて、不信と警戒が浮かぶようになった、とそこまで思い出すとせつないが。
でもそれらを、なんとか乗り越えられたのも、その前の数年間、療育と幼稚園と1年生のころの達成感や幸福感があるからで、あの頃の先生方には本当に恩を感じる。ピアノの先生にも。

トルコ行進曲、息子はいつになっても指が届かなかったのが、去年あたり、ようやく指が届くようになって、まじめな顔して弾いていた。

そのあとのトークイベントで、ピアニストの先生がトルコ行進曲弾いたのを、息子は真っ赤な顔して聞いていた。同じ楽器、同じ曲なのに、全然違う。打ちのめされていたのはいいことだ。
それから息子、ようやくひらがなが書けますという感じの女の子からお手紙もらっていた。「じょうずでした」って書いてあった。Cimg7852



うちの男の子たちは、誰も母の日を思い出さなかったけど、日曜日が父の日だったなんて、私も思い出さなかった。

この週末を、息子がずっと気にしていたのは、ピアノのことではなく、まして父の日でもなく、JR西日本トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)の運行がはじまるということで、最初の運行は、17日に大阪を出て、18日に下関に着いたらしい。
いつか乗りたい、と息子は言う。一泊二日で何十万もそれ以上もって、とんでもないと私は思う。理解を超える。だってその路線を一泊二日で走るんなら、青春18きっぷで安く行けるし。それでも海はきれいだと思う。
でも、そういうことではないらしい。

それで息子は、
「ぼくが大人になったら、ママを瑞風に乗せてあげるから、長生きしなさいね」と言う。

おお。忘れないように書いておこうっと。
たぶん。そのときになっても、瑞風の切符より、現金をくれたほうが助かるのに、と思ってしまう母かもしれないんだけど。
きれいな名前ではある。瑞風。

私にはきみが、瑞風だよ。Cimg7854

紫陽花と百合が咲いた。
夜、巣にもどってきているつばめ。

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