影のない時間

秋は、お隣からやってきた。
まず、柿と栗がやってきて、それから、さつまいもがやってきて、それから白菜と大根がやってきて、また柿がやってきた。
それで、ああ秋になったなと、思ったわけだった。
ありがたいことでした。Cimg9245

外に出ると、向かいの森の紅葉が、胸にせまる。森の奥で物音がするのは、鹿。
夜中に切ない声で鳴く。

ある日のゆうぐれ、畑にいて、気づいたのだ。
影がない。葉っぱが地面に影を落とさない。私に影がない。

ここは、すぐ西側に山があるから、日が沈むのがはやい。夕焼けも見えない。

そっか、日が沈んで光がないと、影もないわけか。
存在には影があるのがあたりまえと思っていたから、影がないのが、なんか不思議でしょうがない。しばらくして、街灯がともると、あらわれました、木の影、葉っぱの影、私の影。

早朝、日の出前に外に出ると、やっぱり影はないのだった。

ずっと、私がいるから影があるという気がしてたけど、そういうことでもないみたい。

水曜の午後、学校へ行く。こないだの、インターンシップの発表会。内容をパワポでまとめて、ひとり3分。息子の発表が終わったら、途中で帰るつもりだったけど、見ていたら面白かったので、結局クラスの30人分、全部聞いた。
パワポは、文章と写真でまとめられていて、それぞれ個性がある。
みんなしあわせな大人になるといいな。
息子のは、ひとりだけ、写真だけでなく動画まで貼りつけてあって、画面のなかで、いくつもの医療機器が、動いているのが、
心臓がどくどく動いている感じで、面白いような、不気味なような。

私が、ほかのお母さんたちとおしゃべりしているうちに、息子は先に帰ってしまった。
通学靴、サイズの大きなのを一足、譲ってもらえることになった。まあ、そういう話をしていた。
バスの窓から夕焼け見ながら帰った。
しあわせな時間を、もらってる。