童子の死

森田童子が亡くなっていたらしい。今年の四月に。
ふいに胸に痛みが走る。それで、ユーチューブ聴いている。

若い頃に聞いたとか、そういうことではないのだ。ずっと名前しか知らなかった。ある日、人からもらったカセットテープに、森田童子の「サナトリウム」の曲が入っていた。それが彼女の声を聞いた最初。声に惹かれた。90年代の半ば頃。ああもう20年以上前なのか。
あのころ私、人生がもう終わったみたいに、玉手箱の煙のあとみたいに感じていたから、(そういうことはときどきあるみたいだ。子ども時代の終わりとか、たぶん青春の終わりとか)その歌も、ずっと過去の方角から流れているみたいに聞いていたんだけど、
そしてたしかに、過去ではあったんだけど、そのときでさえ、私も、私の兄たちの世代の森田童子も、今からみればじゅうぶん若かったのだ。と、いま気づいて驚いている。

そのカセットテープは、面白かった。といってもはっきり思い出せないんだけど、ロシアの、ソ連というべきかな、ヴィソーツキーの曲なんかも入っていて、早い話、そのカセットテープを編集した人の好きな曲が入っていたのだと思う。

誰がくれたテープだったか、もう名前が思い出せない。一度だけ、会ったかな。たぶんすこし年上の男の人で、顔も思い出せない、何を話したかも思い出せないけど、この人は、この世の居心地が悪そうだ、という感じがとてもしたのを覚えている。

思い出した。パアラランの展示をどこかでしたときに、来てくれたのでした。自分の生活もたいへんそうなのに、気にかけてくれて、しばらく、ニュースレターを送っていたんだけど、数年後、住所が変わって、それからわからない。

私はちゃんとお礼を言えていたかしら。

あのカセットテープどこにいったかな。ずいぶん聴いたけど。テープレコーダーもないし、あってももう聴けないんだけど。
好きな曲を入れたカセットテープを、あげたりもらったりしていた時代が、あった。そういえば、そういうことがあった。

時代の終わりの音、みたいな死の知らせ。
このあたりを貼っておこう。

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