納骨と温泉と

父の葬儀を終えて、帰ってきたら、コロナ対策で学校は休みになり、学年末試験も流れて、息子は大喜び。ああもう、物理をやらなくていいんだ、とか、提出が4月なら、なんで通夜の後までノート開いて数学の問題解いていたんだ、とか言っていたが、そのあとすかさず、春休みの宿題がひとやまやってきたから、そんなに退屈もしなさそうだった。楽しくもなさそうだが。

それなら、ごはん作ってもらおうと、声をかけたら、いやがることもなく、いわれるままに、玉ねぎを炒めたりキャベツを刻んだりしていたが、一週間ほどで飽きたらしい。自分から積極的に料理しようなどとは思わないらしく、最大の発見は、母は、非常に簡単な料理7種類くらいで、毎日の食卓をまわしているということだった、らしい。
そうそう、簡単なことしかしてないよ。
簡単なことしかしてないが、息子を台所に立たせると、なんでもないようなことが、なんでこんなに難しいかと、それは私の発見。どうして包丁をもつ手首が、そんなに無駄にぐらぐらゆれるの。なんで、玉ねぎ切ってる間に、まないたが、どんどん向こうにずれていくの。
まあ、面白い。
おやつにたこ焼きも作って食べた。

春休みに納骨しようという話にしてたが、少し早くすることにして、18日から四国に帰ることにした。早いほうがいいのだ。今なら、父の残してくれたへそくりがあって、病院の支払いと納骨できるし、納骨のときに温泉旅行もできるはず。でもしばらくしたら、兄の手のなかで露のように消えるだろうから、いまのうちいまのうち。

……と思った私の判断は正しかった。

父はずいぶん前に、墓を高松のほうに移していて、いまは不思議なことに、弟がその近くに住んで、しょっちゅう墓参りに来ているらしい。石鎚SAで兄と待ち合わせ、墓園で弟と待ち合わせすることにして、18日早朝、パパと息子と私は広島を出発。いい天気で、しまなみ海道を渡るのは楽しかった。あちらこちら山桜咲いていた。

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午後、墓園で合流。手続き済ませて、最後に父の骨を見たのは私だ。墓をあけたら、すでに名簿では七人くらい、骨壺は5つくらいある、上の段はぎゅうぎゅう。弟が、骨壺の場所を、あれはこっち、これはこっち、親父とおふくろは並べて、と指示しているのが、なんかかわいらしかった。
祖父母と両親と、若くて死んだので私は知らないおじたちがいて、もう墓のほうがにぎやかそうだ。
あと、のこっている叔父たちと兄と弟が加わったら、もう絶対混沌、混沌、笑ってしまう、そっちが面白そうでいいけどな、また一緒に、釣りして花札して遊びたいけどな。遊びたいけどな。
でも、私はそっちに行かないんだろうな、
……でも、どこに行くんだろう。

兄と和解した弟は、そもそも人なつっこいやつだから、またなついてくるだろう。母が死んだあと、母の兄たちと父との関係は途絶えていたが、弟だけは、なぜか顔を出していたらしく、父が死んだことも、弟が吹聴してまわっていたとわかって、笑ってしまう。とはいえコロナ騒ぎだし、父の家の電話も止めたら連絡しようもないので、不義理を責められることもあるまいよ。

早いもん勝ちやな、と兄は言いながら、残った叔父たちの間を行き来している。

その夜は、レオマの森とかいう、温泉ホテルに泊まる。兄が、温泉と夕食朝食つき、というもんで。息子は、琴電に乗るか撮るかしたいというもんで。線路が近くにあるところ。
んで、案内の弟の車のあとをついていく。途中でうどん食べてホテルへ。息子と弟は、それから琴電を撮りに行った。

そういえば、パパと私の弟は初対面なのだった。どうよ、シンとリクは似てるでしょ。全然似てないけど、でも似てるでしょ。

弟は泊まらないが、飯ぐらい食わせてやろうよとチケット代余分に払う。お風呂もどうぞと言われたが、お風呂は……無理だな。
バイキングはカニが食べ放題ということだったので、ここにしたのだ。息子はエビを食べないので、彼はエビやカニは嫌いらしいと、以前私が言ったら、カニは食わせてもらったことがないと抗議しやがった。で、さあ食え、食べ放題だ、と皿をとってやった。
……で、生まれてはじめてかもしれないカニを、不器用にハサミを使いながら食べた息子が言うには、「カニカマのほうがいい」「面倒くさくないし」だってさ。
でも、昔、子どものころに、おいしいなと思って、夢中で食べたようなカニではなかったよね、たしかにね。

翌朝、早朝から起き出した息子は、今度は、兄に運転させて、琴電を撮りに行ったらしかった。面倒くさいので、私たちは朝食の時間までは知らんぷりで寝た。

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窓の下のテーマパークはコロナで休止とか。