蝦名泰洋歌集『イーハトーブ喪失』電子本が出ました。
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最初に収録されている「モスクワの羊飼い」を、読ませてもらったのは1990年頃かな。ゴルバチョフがソ連の大統領で、グラスノスチ、ペレストロイカという言葉が、美しく聞こえていたころ。前年にはベルリンの壁が壊れて、ルーマニアではチャウシェスクの独裁も終わっていた。
あの頃、世界はこれからきっとよくなっていく、と思っていたような気がする。私たちは幸せになると思っていた。
まだ広島にいた頃、学生の頃からいた下宿の、西日の射す部屋で、「モスクワの羊飼い」読んで、短歌っていいなって私は思った。思ってしまった。
いにしえの革命家像を雨が打ち青銅の十指みな雫する
明日あると思う野面にまだ解けぬ星の宿題たずさえわれら
農事書の「大地の章」に従いて春には遠き不安蒔かねば
盲いしゆえ指もてたどる墓碑銘にわれの名もあるチェルノブィリ址
「モスクワの羊飼い」
20年過ぎたよ。グラスノスチは「情報公開」、ペレストロイカは「改革」。なんて、なつかしい言葉だろう。