蝦名泰洋歌集『イーハトーブ喪失』電子本

蝦名泰洋歌集『イーハトーブ喪失』電子本が出ました。

http://kozui.sblo.jp/article/54419232.html

最初に収録されている「モスクワの羊飼い」を、読ませてもらったのは1990年頃かな。ゴルバチョフソ連の大統領で、グラスノスチペレストロイカという言葉が、美しく聞こえていたころ。前年にはベルリンの壁が壊れて、ルーマニアではチャウシェスクの独裁も終わっていた。
あの頃、世界はこれからきっとよくなっていく、と思っていたような気がする。私たちは幸せになると思っていた。
まだ広島にいた頃、学生の頃からいた下宿の、西日の射す部屋で、「モスクワの羊飼い」読んで、短歌っていいなって私は思った。思ってしまった。

 いにしえの革命家像を雨が打ち青銅の十指みな雫する
 明日あると思う野面にまだ解けぬ星の宿題たずさえわれら
 農事書の「大地の章」に従いて春には遠き不安蒔かねば
 盲いしゆえ指もてたどる墓碑銘にわれの名もあるチェルノブィリ
              「モスクワの羊飼い」

20年過ぎたよ。グラスノスチは「情報公開」、ペレストロイカは「改革」。なんて、なつかしい言葉だろう。