友だち

帰国した日の午後、子どもが学校から帰るのを待っていたら、一度に3人の子がなだれこんできた。近所の同級生のSくんとMちゃん。夏休みあけてからはじめてじゃないだろうか。

先月の半ばくらいかな、朝、通学班で集まったときに、子どもはSくんに向かって、Sくんのママも町内会長も、ほかのみんなもいるところで、「ぼくをいじめるのはやめてください」って突然言ってのけた。
子どもなりに思いつめていたんだろう。私も驚いたけど、あたりもシーンと凍りついた。それからは、朝の通学班でも、Sくんは目をあわせることもできずに、実に気まずい日々がつづいていたのだが。学校でも近寄ってこなかったらしい。

だったのだが。前の日の帰り道で、SくんとMちゃんと3年のSくんと、3人ともが、もう絶対いじめないって、約束してくれたんだそうだ。
……ってことは、いじめてた自覚はあったのかい。

私の子どもはひとり遊びの天才なので、ひとりでもそんなに困ってるふうではなかった。もしきみが、また一緒に遊んでもいいと思ったら、連れてきてもいいんだよって何度も声をかけたが、またいじめるからいやだ、ひとりのほうが自由に遊べてずっといい、って言っていたんだけど、謝ってもらって納得したのかな。たぶん、Sのほうが孤独に耐えられなくなったな。

そんなわけで、バスを降りてから、みんなにからまれないように、いつも猛ダッシュで走って帰っていた子どもが、翌日、私が迎えに行ったときも、おかーさんと手をつなぐでもなく、前を素通りして、SやMと一緒に肩くんだり、イチョウの落ち葉を蹴散らしたり、じゃれあいながら帰っていく。ああ、子どもらしい、いい景色だ。

今日は3年生のSも一緒にころがりこんできてた。
みんなすこしだけ宿題して、にぎやかに遊んでいた。
しばらく夕方はさわがしくなりそう。



ところで、子どもにはもうひとり友だちがいて、ムショク・トーメイくんという。
このトーメイくん。「ぼくが、宿題しようとすると、やってきて、机の上にミニカーを並べたり、床に段ボールと積み木の町をつくったり、借りてきた本を読みはじめたりして、ぼくが宿題するのをじゃまする」のらしい。

部屋に様子を見に行くと、子ども、いきなり立ち上がって、私にはトーメイくんがどこにいるのかさっぱり見えないのだが、子どもにはよく見えるらしく、トーメイくんを叩いて、外に追い出している気配。
「ああ、やっと出ていった。トーメイくんはここで遊びたがってなかなか出て行かないから、ぼくは叩いて追い出さなきゃいけなかったんだ。でもやっと出て行ったから、これから宿題するね」

つまり、きみは、おかーさんが見てない間はずっと遊んでて、全然なんにもしてないってわけですね。