助けられない

それは自分が悪いのだから、誰を恨む筋合いのものでもないと、住むところも食べるものもなくなっても、思っているだろうなあ。
家族である。家族であるが、互いに互いを助ける力がない。力がないんだ。全然。愛情も善意も、ここにいたっては役に立たない。近寄ったら共倒れになるしかないんである。
父も兄も弟も、私ほど冷淡な人間ではないので、互いに助けようとしながら、そんなことできず、みんながすべてを失って、どうしようもなく傷ついて、もう互いに近寄ることもできない。
誰もが、食うや食わずなんだもん。
いっときは、兄が、米送れ、の電話をかけてきてたもん。
兄からかかってこなくなったと思ったら、弟からかかってきたんだけど。送る米があるのが、まったく幸福なことだけど、米送ったあとは、こっちもぎりぎりの暮らしだもん。
ホームレスの何割だかに、知的障害があるという報告。そうだろうな、と思う。発達障害者は多いだろうと思う。
先のことを考えて貯金もして、保険証もって年金も払ってって、役所に行って手続きして、そういうことができれば、すこしはましなのか。でもそれはものすごく難しいことだったりする。
うちなんか、父も弟も、死ぬほど字を書くのがきらいである。
なんの診断を受けたわけでもないが、弟は発達障害には間違いないし、軽い知的障害もあるだろうと思うんだが、幸い、肉体労働はできる。いつまでできるかわからないが、指がなくても耳がきこえなくても、できる仕事はまだある。いまは仕事がないにしてもだ。
でも、働けなくなったらどうなるんだろう。
あの子は帰る家がない。