パアララン・パンタオ レポート ⑤ ベリーグッド

パヤタス校周辺の様子。(右上から)Cimg1648

ゴミのトラックの通る道

ジャンクショップ。緑の山は、ゴミ山。

パヤタス校前の道。パンパンガ・ストリート。

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5日、朝、ラリーさんと病院に行く。ジェイコーベンとグレースがいる。
レティ先生のセラピー、それから退院の準備。支払その他でジェイコーベンは病院内を行ったり来たりしている。午後、マリアペレも来る。
セラピーのとき、膝を立ててシーツをかぶせたのが出産Cimg1362の恰好に似ていると言って、今から生まれるよ、とレティ先生が言う。おぎゃあ、と泣いて見せる。ほんとに、笑わせてくれる。
レティ先生、退院しても、体を起こすこと、立つこと歩くこと、すべてに介助が必要な状態が続くだろう。
家族が多いということの幸いを考える。そしてレティ先生の家族の仲のよさは、まったくすてきだ。
20年間、一緒にやってきて、パアララン・パンタオという学校が、この家族の絆を強くしていることも感じる。パアラランがなかったら、ジン先生もベイビー先生も、レティ先生と一緒にパアラランの仕事をすることもなかったろう。そしてもっと、いろんなことが違っていたと思う。Img_1227_2

カズミさん、ここで何してるんですか、って学生にきかれたんですけど、そういえば。
いや、何もしてません。ただ、ここにいるだけ。
でもたぶん、ただここにいるだけ、の存在のなさけなさを、自分にゆるしてやってもいいような気持ちにしてくれるのが、私がパアラランのみんなを好きな、第一の理由かもしれない。
夕方まで、私は病室のソファで寝て過ごした。

レティ先生、パヤタス校に帰る。車椅子でキッチンに。校長室は病室になった。
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ある日。教室では、子どもたちは色の学習をしている。
マリアペレ先生が色水をつくる。赤と青を混ぜたら何色になる? ひとつひとつ混ぜ合わせて、橙色、緑、紫をつくっていって、最後はぜーんぶ混ぜて、黒。

別の日、ルーフ先生は「わたしの気持ち」の学習をしていた。気持ちと気持ちをあらわす言葉(英語とタガログ語の両方)。子どもたち、泣いてみたり怒ってみたり、百面相だった。Cimg1701Cimg1703

 






私が到着した日、抗がん剤のせいでぐったりして、スキンヘッドも痛々しかったジン先生も、すこしずつ体調がもどっていて(「死ぬほどつらい」抗がん剤治療はこのあともしばらくつづくのだが)、声も大きくなってきて、ときどきは教室に出てきていて、すこしほっとする。
そして、ここの先生たちは、どんなにシャイな女の子も、日ごとに、どんどん声がおっきくなる。

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先生たちの指導ノートを見せてもらった。細かい字でびっしり。パアラランは、とてもユニークな幼児教育のスキルをもっているのだが、このノート、だれか翻訳してくれないかな。

放課後、ジン先生とグローリア先生とマリアペレ先生と一緒にパヤタス・カードをつくる。スポンサーさんへのお礼のカードで、絵を貼って、いつもはレティ先生のサインを入れてもらうのだが、サインをしてもらうのは無理なので、かわりに、子どもたちの好きなベリーグッドのスタンプを押した。Cimg1621
ベリーグッド、なんて、よくできました、なんて、子どものころだってあんまり言ってもらえないけど、大人になってからますます言ってもらえないし、でもたまには、大人だってそう言ってもらっていいと思うよね、と思って。

「人々は、みんな困難を抱えている」とジン先生が言った。
治療で死にそうな気分のとき、「ママは闘わなければいけないし、強くならなければいけないよ」と息子たちが、泣いて励ましてくれたのだそうだ。

みんな闘っている。みんなベリーグッドだよ。



帰国の日が近づいてくると、台風が近づいてるよって言う。だからカズミは帰れないよって言う。

いつも言うし、そしてたいていは嘘なのだが、一度だけ、本当に台風が台湾に来て、台北経由の飛行機だったから、帰国できなかったことがあった。

今度も、台風は台湾を目指している。どうだろう。8日は無理だけど、7日は大丈夫な気がする。10日は私の誕生日だから、帰国は11日だよ、とベイビー先生が言う。この次はそうするよ。

7日早朝、5時にジュリアンが来て、5時半出発。平日なので、6時を過ぎると渋滞に巻き込まれるからその前に出ようって。

ベッドのレティ先生の腕に触れると、抱きしめてくれる。とても暖かいレティ先生の腕。いつも、こちらが思っている以上のやさしさを、この人はくれる。私は、この人と一緒に生きたいと20年前に思って、いまも変わらずにそう思っている。

街はもう起きている。小学校や高校の前では、子どもたちがすずなり。朝のクラスは6時からはじまるのだ。 
飛行機は無事に飛んだ。台北空港はさすがに風が強く、台風前夜の混乱で、出発ゲートの変更で端から端まで歩いたが、1時間半遅れで、広島着。パパと息子が迎えに来てくれていた。 

☆☆☆

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