洪水ちゃんVS男子たち

学校から帰ってきた息子が、洪水ちゃんのことを怒っていた。「おしゃべりがうるさい。もういいかげんにしてほしい」
洪水ちゃんのおしゃべり(女の子のお喋りは、たいてい女の子同士のお喋りだが、彼女はひとりで先生相手に一方的に喋りつづける)はいつものことでしょ、って言うと、なんでも社会の時間に、他の男子たちがいい質問をして、それがどう展開するか楽しみにしたのに、そこで洪水ちゃんが口をはさんで、授業の流れが中断されてしまったということなんだけどね。それもいつものことでしょ。
男子の何人かは「そこで口をはさむな」とか「今しゃべるな、迷惑だろ」とか、いろいろ注意するらしい。でも洪水ちゃんは聞く耳持たない。「べつに迷惑かけてないし」って平然と口答えするし、本当にそう思っている。
授業中、洪水ちゃんは実に積極的に手をあげる。ところが洪水ちゃんがしゃべると徹底的に自分勝手なので、何人かの男子は、洪水ちゃんが手をあげるときには必ず手をあげて、授業をさえぎる方向ではなく、すすめる方向の発言をしようと頑張っている。
(授業中に手をあげる危険、を回避するために用心深い息子は、できるだけ手をあげないようにしている。でも発言しないと点数をひく英語の先生がいて、自分のスタイルと点数との間で葛藤している。)
ともあれ、クラスのことを聞くと、洪水ちゃんが中心なのだった。洪水ちゃんVS男子たち、の攻防戦なのだったが、ほかの女子は?って聞くと、さあって言う。
いったい、どうすればいいんだ、と息子は苛立っている。それはたぶん、誰にもどうにもできないんだけど、男子たち、なかなか面白い。
先生たちとカウンセラーと親と本人と、みんなでがんばってほしいことだよね、と息子には言った。

さて、夏休みが終わって、すぐにテスト、すぐに体育祭の練習、人によっては、夏休みの宿題が終わっていなかったり、呼び出しあったり、追試あったり。これに部活が加わって、遠距離通学が加わったら、子どもたち相当にしんどいのではないだろうか。
男子たちの話。夏休み明け、しばらく休んでいたペーパーが久しぶりにやってきたら、追試と提出物がどっさりだった。ミッキーは英語の夏休みの宿題を提出していない。それで、英語の時間は頭痛を装って保健室に逃げていた。「課題の出せていない人ばかり、休んでいるのはどういうこと?」と先生は言ったが、もちろん黙っていた。英語の時間が終わると、ミッキーは元気に戻ってきた。

息子、英語の自習ノート、本人的には、がんばるにはがんばったが、富士登頂(富士山の絵のスタンプカード)まで数ポイント、足りなかった。
先生が言うには「このクラスがなぜ遅れているかというと、他のクラスは6ページ以上と言ったら、6ページよりもっとたくさんやってくるんです。でもこのクラスは6ページか、それ以下しかしてこない」。
富士登頂しないまま、今度はマリアナ海溝スタンプカードだ。
悔しい息子、
するつもりのなかった7ページめの作文を書いた。

登場人物、ハンプティとダンプティとミスターAの会話はこんなふう。(英語めんどうなので日本語で再現)
「ショックだよ。富士登頂失敗」「もうちょっとだったのに」「悔しいな」「でもぼくたちがんばったよ」「そうだよ。気にするなよ。ぼくらは悪くない。悪いのは作者だからね」「今度はマリアナ海溝に行かなきゃ」「超難しい」「超危険」「潜水艦が必要だよ」

息子、書きたいこと書いたら、すっきりしたらしい。(電子辞書駆使して、なんとか書き上げてしまう。)
うん、ハンプティたち、ほんとがんばったと思うよ。ページ数は稼げないとしても(コントを考えるのに無駄に時間かかるし)、退屈な作文はいっこもないよ。

潜水艦が必要だと言うので、ビートルズの「イエローサブマリン」を教えてあげた。