小学校4年生の国語の教科書には、新美南吉「ごんぎつね」が載っている。
それで音読の宿題あるので、息子が読むのを聞くのだが(しばしばさぼって、読まなかったが)何度きいても、泣ける。

ところで、息子が、友だちのことで困ってるって言ったのは数日前。
通学班は別だけど、バス通学なので一緒にいる時間の長い、同級生のTくんが、まとわりついてくるのが、どうにもしんどい。

「Tくんが引っ越すって言っていた」としばらく前に息子が言った。
Tくんママは、でも子ども会の役員で、一緒にやっているけど、そんな話はきかないよ、って私が言ったので、嘘だとわかったらしい。
そのあとも、いまいる家の隣に引っ越すんだとか、いろいろ言ったらしいのだが、なにをこだわってんのか、よくわかんなくておかしいのだが、何日かして嘘だったって白状したらしい。で、そのとき息子に「だまされるほうが悪い」と言ったんだって。そのときは、彼はすこし傷ついて帰ってきた。
ほかにも、ひとりでいたいのにじゃまする、とか、ぼくのひざの上にすわって、どいてって言ってもどいてくれないとか、紙鉄砲のこわれたのを、ぼくのランドセルにつっこんだ、とか。いろいろあるようなのだが。

ときどき、ほかの子らの仲間にはいれなくて、でも、ひとりでいるのもいや、という子が、同じようにひとりで過ごしている息子のところに寄ってくる、ようなのだが、

息子はやさしくない。彼は、よほど相手と波長があって楽しいというのでなければ、ひとりのほうがいいのである。たぶん、いたって冷淡だとおもう。

それで、思うようにいかないものだから、苛立ったんでしょう、Tくんは、
「夜中の3時におまえを刺し殺しに行く」って、言ったんだって。

そりゃまあよろしくないけど、ほんとに来ると思う?
「来ないと思う。だってぼくの家がどこか知らない。脅してみただけだと思う」
じゃあ、気にするなよ。

もし、先生やTくんのママに言ってほしければ、言いますが?
「言わなくていいです」

昨日、息子は紙にくるんだ栗の実を2個、学校からもって帰った。
Tくんにもらったらしい。このあたり、いろんなところに落ちてる。
紙には「まえ ごめんね」って書いてある。
栗にも「まえ ごめんね」って書いてある。
かわいいなあ。

ありがとうって言った?
……。
それとも、ぼくは栗はきらいだから、食べないんだ、って言った?
「言ってない」
いい子だ、言わないんだよ。

「でも、今度は500個もってくるっていうんだ。500個もってきたらどうしよう」
Tくんすごい。笑ってしまった。500個もらったら売りにゆく。

「なんか、ごんぎつねの話みたいだね」って息子が言う。
Tくんは、一緒に遊びたいだけだと思うよ。
兵十みたいに、まちがって撃つなよ。