かっこわるいはかっこいい

大雨警報出ている。

午後、下校のパトロールの当番なので、大雨のなかバス停まで、帰ってくる子どもらを迎えに行く。息子はピアノレッスンの日なので、帰らずにそのままレッスンに行くから、ほかの子どもたちと歩調あわせて帰っていたら、
背後で、うちの班長の六年男子が、毎日見回りパトロールしている隣の町内会のおじさんに、言っているのが聞こえた。
「ぼくは二十歳になったら死ぬから」

なんでよ。二十歳って一番楽しい頃よ。 って、おじさん言う。いやいや楽しくないない、って思うけど、まあ、だまっておく。
──僕は20歳だった。それが人の一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
ポール・ニザンだっけ。この言葉を言った人としてだけ記憶しているポール・ニザン
二十歳の頃なんて、人生で二番目くらいに惨憺としていたよ。

「二十歳になったら死ぬから」
12歳の班長。ああ、そういうことを言う年頃になったんだねえ。
昔バイトしていた児童館でも、小学校の終わり頃、中学になった頃、子どもたちはそんなことを言っていた。
だいたい、私自身がそう思ってたもんね。二十歳より向こうに人生がつづくなんて、想像できなかった。
子どもの未来は、大人なわけですが、大人というものになると思っていないから子どもは子どもなのであって、
その終わりを思って、やたらに切なかったのは、15歳くらいだったのかなあ。

「青春はかっこわるいんだって」
と、最近パパは息子に言っていた。
こないだのレッスンのとき、ほかの女の子たちもいるところで、先生に注意されるのを恥ずかしがって、逃げ出したのを、迎えに行ったパパが見かけて、その場で叱った。息子は二重に恥ずかしくて、
あとでぐすぐす泣きながら、「ぼくのプライドはどうなるの」などと言った。
プライド、ねえ。そういうことを言い出す年頃なのかなあ。
それでパパはえんえん言い聞かせてたわけだ。

よく見られようなんて思うな。プライドにこだわるなんて阿呆だ。青春はかっこわるいもんだ。かっこわるい奴がかっこいいんだ。かっこわるくなれないやつは駄目な奴だ。先生に、注意されてるかっこわるいおまえがかっこいいんだよ。逃げ出すのは最低最悪、かっこわるい。そんなやつは、女子にも絶対もてない。

ま、将来息子が、二十歳くらいになって、ママは何を書いていたのかと、こっそり読むときのために書いておこう。

かっこわるいのがかっこいいって、「どんぐりと山猫」の話みたいね。
ぼろぼろにかっこわるくていいから、二十歳の向こうへ、もっと向こうへ、生きてみるといい。かっこわるければかっこわるいほど、絶対おもしろい。

それで何を注意されていたかっていうと、宇宙戦艦ヤマト、自分で勝手にいろいろアレンジしていたらしい。でもみんなと一緒にやるんだから、譜面通りひきなさいって。逃げるような話じゃないじゃん。 
鼻ほじるのやめましょうとか、そういうのを女の子の前で言われたわけでもないんだから。そこの区別はできるようになろうよ。