あこや貝が消えた

昨日の兄からの電話で、私たちが帰省するときにいつも泊まっていたホテルが、店じまいした、と聞かされた。

非常に安価で良心的で、ネットにものってないからお盆でも部屋があるという、ありがたいホテル、焼き場と斎場の近くの草のなかにあって、喫茶店や焼肉屋も併設していたわたしたちのお気に入りのホテルが、なくなった。
建物ごと売却して、こんどそこに介護施設ができるのだそうだ。

ホテルには、郵便番号3けたの時代のパンフレットがあって、そこの謳い文句が気に入っていた。お客様はパール(真珠)、私たちはそのパールを包むあこや貝。

見てくれは幽霊屋敷のようだったが、営業してるなんて思えないほどだったが、ほんとに良心的だったのだ。併設の喫茶店が休みの日は、パンやカップヌードルの支給までしてくれたのである。

ああ。これから帰省したとき、どこに泊まればいいんだろう。お祭りやお盆のときなんて絶対部屋とれないし、お祭りやお盆じゃなかったら、闘牛見れないし。
ふつうのホテルだと、どんなに安くてもいままでの倍くらいかかる。無理だよ。父の家に泊まるのはもっと無理だし。

どっかさがしといてやるよ。ホテル代くらい出してやるよ、と兄は言ってくれましたが。
あんな昭和な、いいかげんな、廊下には冷暖房がなくて、部屋の時計の時間はあっていたためしがない、でも冷蔵庫にミネラルウォーターとおしぼりが入っているという心遣いがすばらしい、あんないごこちのいいホテルが、もうあろうとも思えないなあ。

たしかに、時代はひとつ終わったのである。 私たちは、あこや貝を失った。



でも焼き場と斎場の近くの介護施設、って。 合理的といえば合理的かもだけど。
そういえば、近くにはラブホもある。ラブホに泊まるという手もあるなあ。ベッドもお風呂も広いし。でも子どもが微妙な年頃だなあ…。
そのラブホは、いつものホテルが水が出なくなったことがあって、そのとき、お風呂を借りたんだよね。深夜に腰が90度にまがったおばあさんが、出てきて案内してくれるのが、なんか異次元にまよいこんだ気がしたのだった。

☆☆

さてそれで。
兄からみかんが届いた。紅まどんな♪ 愛媛みかんの新種で、贈答用の高級みかんとして人気、らしい。いくらかかったかは聞かないのがしあわせ。息子が夢中で食べていた。ほんと、おいしいです。

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