親を売りに

スクールカウンセラーに話を聞いてもらった息子は、少し、傷ついて帰ってきた。
聴覚過敏のために、音楽の授業のさわがしさがつらいことと、先生の話を真に受けて、しんどくなることについて、相談に言ったのだが。
家族のことを聞かれて、困惑したらしいのだった。はじめて会う人に、そんなプライバシーに踏み込まれるとは思いもよらなかったらしく、動揺した。しかも自分は聞かれるままに答えてしまって、そしてたぶん、答えているうちに、自分がもっている家族像が、何か違うものになってしまうことに、彼は気づいてしまったのだと思う。

大丈夫大丈夫。質問に答えたからって、きみは親を売ったわけではないし、それでどう思われてもどうってことない。それに先生は守秘義務は守るんだから。親の年齢も聞かれたんだって言う。それで○○歳って答えた。なるほど、2年前にはそうでしたけど。つまり、少々嘘が混ざったって、ほんとのことを言って変な家族だと思われたって、ほんとにどうってことないんだから気にするなよ。と、ひとしきりなぐさめたことだった。

私も覚えがあるねえ。高校の家庭科で、母親の一日について、記録するという、今でもゆるせない課題があって、あのころいろいろたいへんだった母の日常を、そんなこと何にも知らないし理解できない教師の目に晒す、ということは耐え難くて、「私は母の生活に関心はありません」と書いて提出したら、「あなたは冷たい人ですね」と書かれてかえってきたのだった。でも再提出しなければならなくて、そのときは大嘘書いて出した。最初から大嘘書いてもよかったよなあと、あとで思った。
私は母さんを、そんな課題なんかで、教師に値踏みされたくなかったんだよね。

さて音楽の時間の苦痛について。
先生に話しましょう。改善しなければ耳栓の使用もやむを得ないし、それは、話せば理解してもらえることだと思いますよ、ということで。
そのとおりに、連絡帳に書く。息子は耳栓は使いたくないらしいんだが、一応、もっていきますかね。スクールカウンセラーに相談するほどつらくて困っているということを、言いたいためだけに、相談に行ったような感じだなあ。

  親たちの秘密を自分の秘密のように抱えて子どももなかなかしんどい