帰省 ② 木屋旅館と「女神の自由」

13日。雨の予報だったけど、晴れ。
木屋旅館に行く。明治44年創業の老舗旅館。犬養毅司馬遼太郎も泊まったという。95年頃廃業したのだが、数年前にまたリニューアルオープンしたときいたので、見学に行こうと思った。というのも、この旅館、戦後すぐに父が左官の見習いになった頃から、廃業まで(そのころ父も仕事をやめた)、父の仕事のお得意さんだったのである。壁を塗りなおしたり、屋根をなおしたり、全部してきたという。それで息子に見せてやろうと思って。

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行くと、ポーランド人のマネージャーさんと日本人の奥さんが、いろいろ話を聞いてくれて、なかを見学させてくれる。リニューアルオープンのとき、全部壁も塗りなおしたから、父の仕事のあとは残ってないかもしれないのだが、屋根を吹き抜けにして、太い梁も見えていて面白い。風呂場のタイルの一画が、昔のをそのまま残して使っていて、その模様の古くささが、なつかしい。
私、子どもの頃、父の仕事の現場が近いと、よく行って、行くとタイル磨きさせられた。
父の家からは離れているので誘わなかったが、連れてくればよかったな。

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司馬遼太郎の色紙「悠々千年 心」とか飾ってあった。
建物が残ることになってうれしい。一館まるごと貸出の、かわった宿泊形態で、施設使用料2万円+宿泊料5000円×人数分で泊まれます。10人のグループできたらひとり7000円くらい。
息子が気に入って、いつか泊まりたいっていう。詳細はこちら。http://kiyaryokan.com/top/

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旅館の一画で販売していた小物は、黒田のぼり店(こいのぼりとか、船の大漁の旗をつくっていたお店と記憶している)ののぼりのデザインの布の小物など。お金がないので、買えないのも残念だし、良く見なかったけど、なつかしかった。



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大竹伸朗さん(宇和島在住のアーティスト)のガチャが置いてあって、そうそう、これ欲しかったんです(私は)。息子がガチャして、象の「サダコ」さん出てくる。子どもに人気の象さんらしいですが、息子は、ぼくは「女神の自由」が欲しかった、という。するとマネージャーさん、女神の自由と交換してくれた。
(帰って、さっそく机に飾っている。お気に入りのベン・シャーンの街の絵のポストカードの前に、戦艦とかライト兄弟の飛行機とかと一緒に。)
ありがとうございます。楽しいひとときでした。




木屋旅館から歩いて数分のところに、生まれてから5歳まで住んでいた。ちょうど祖父が亡くなった頃まで。見に行く。すっかり変わって、住んでいた家はもちろん、隣の魚屋も向かいの駄菓子屋も、斜め向かいの米屋も、なんにもない。でも何かしら面影があって、なつかしいやらせつないやら。昔、私がここにいたことなんて、もうだあれもしらないだろう。そう思うと、私は(そして誰もが)ある時代のある空間を、上手に盗み取った子どもなのだ。

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