「嘘」

昨日、ヘルマン・ヘッセを読んでいた。図書館で借りた本。
『わがままこそ最高の美徳』という本。ああ、ヘッセはいいなあ。
なかに「子どもの心」という文章があって、父の部屋で盗みを働いて、見つかって、すぐにばれる嘘を言う子どもの気持ちをえんえんと書いてあるのが、楽しかった。

中学校の図書室で、わたしはこの詩が好き、とゆきちゃんが言った。貸した詩集を返してくれるときだ。ゆきちゃんがノートに書き写した詩を見せてくれた。丸山薫の「嘘」という詩。ひさしぶりに思い出して、なつかしかった。


   嘘  丸山薫

少年の嘘は
さまざまの珍らしい夢をふくみ
波を縫ふ海鳥の白い翼の巧みをもち
ちちははもそれに欺されるときばかりが
少年の眼には世に気高く見えた
だが少年が悲しくないと誰れが云はう
あまりにも美しいものが遙かに飛び来つて少年の心に住ふとき
たとへば時ならず花がいちどきに咲き匂ひ
または遠い空の涯の夕暮がこの世を薔薇色にかがやかすとき
欺されているのは自分ばかりだと
空や雲に涙を流さないと誰が云はう



あのころ「病める庭園」という詩が私は好きでした。検索したら、なんと、自分の昔のブログが出てきた。
http://kazuming.wordpress.com/2006/05/07/%E7%97%85%E3%82%81%E3%82%8B%E5%BA%AD%E5%9C%92/

「朝鮮」という詩も同じ詩集(中央公論社『日本の詩歌』24巻)に収録されている。中学生のときに読んだはずだけど記憶がない。たぶん何が書いてあるかわかんなかったんだな。戦慄して読んだのは、大学の頃かもっとあと。
http://kazuming.wordpress.com/2006/05/09/%E5%A7%AB%E3%81%A8%E9%AD%94%E7%89%A9/