帰ってきた

翌日の夜、修学旅行から帰ってきた息子のお土産は、お菓子だった。ほかにボールペンと鉛筆削り。1000円以上も使わずに持って帰った。まあまあ楽しかったし、いやなこともそんなにはなかった(すこしはあった)。福岡でスペースワールドに行った。ジェットコースターは死ぬかと思った。エイリアン・パニックというところではエイリアンが出てくる前に、ぼくがパニックになった。音が、効果音がいやな音で、気分が悪くなったらしい。それでひとりで休んだ。なるほど、音がね。
何が楽しかった?って聞いたら、ジェットコースターに乗っているほかの子たちが絶叫しているのを見ているのが、面白かった、そうでした。
息子、おじいちゃんが、松陰神社に来ていたことは気づかなかった。

Yくんは修学旅行に行けなかった。
よりによって、彼に向かって「親の顔を見てみたい」などと暴言を吐いた男の子と、同じ班にされていたらしい。担任はその一件を知っているのに、信じられない対応だ。抗議すると、相手の子を指導しますから、と言ったそうで、今さら何ですか、とお母さんは怒ったらしい。
Yくんのいまの担任は、私の息子が3年のときに担任だった。あのとき、息子がいじめにあったときの対応があんまりとんちんかんだったので、私もずいぶん言ったが、相変わらずのとんちんかんぶりだなあ。
「あの先生は、授業は面白かった。でも、いじめへの対応は最悪だった」と私の息子は言うが、Yくんは担任に会うと、パニックが起きてしまうらしい。

Yくんの話を聞いていると、幼なじみの女の子のことを思い出す。ほんとによく似ている。一学年上の利恵ちゃんは中学校で学校に行けなくなったが、たぶん同じ理由だったんだろう。自閉症スペクトラムも自律神経失調も、なんの診断もないころだし、頭はいいのにへんな子、としか見られなかったころ、
あのころ利恵ちゃんの居場所がなかったことについて、
いま、Yくんの居場所がないことについて、
なんか悔しい。頭のいい子たちが勉強できない学校…。

そんなに苦しまなくていいはずと思うのに。なぜ、無駄に追いつめられてしまうんだろう。

「親の顔を見てみたい」程度の暴言は、息子のまわりでも日常茶飯だが、今まで何を言われているかわからなくて呆然としていた息子も、最近は我慢ならなくて言い返すようになった。その言い方が、なかなかきつい。
うっかり手を出すと、噛まれるよ。
噛んでいいとき、噛むべきとき、噛まなくていいとき、噛んではいけないとき、の見極めが、難しいよね。それは、大人になっても難しいよね。