花の名前

国語の問題集に芭蕉
 山路来て何やらゆかしすみれ草
 菊の香や奈良には古き仏たち
の句が載っていた。さて、季語と季節を答えなさい。
すみれはさすがに春とわかったらしいのだが。

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「菊は春?」と聞く。
へ? 耳を疑った。なんで春なの?
「だって春菊ってあるから」
春菊? ああなるほど。いやでも違うよ。菊だよ。
「菊ってどんな花?」
ときたもんだ。ショックだ。畑に菊が咲いてるよって話もしたし、摘んで帰って、いまキッチンに飾っているのに。
関心のないことは耳にも入らないし、目にもとまらないのだった。
 大根引き大根で道を教へけり
は一茶だね。
「でもママ、大根は一年中あるよね」と言う。
ある。スーパーには一年中。でもいま我が家の鍋に飛び込んでいるのは、うちの畑でママが育てた大根で、夏の畑で大根は採れないよ。わかる?
麦秋は春だね」と言う。正解。よくわかったね。
「だって二毛作の場合、麦が実るのは春だから」ときたもんだ。
なるほど。麦秋は国語の問題でなく、社会科の問題なのか。社会科ならわかるのか。

(でも、ここで訂正。麦秋は俳句では夏の季語。五月は夏。苺も夏。)

次のページには、近代の俳人の名前や俳句がいろいろ載っている。
「この人生きているの?もう死んだの?」ときく。
昔私が読んだころには生きていたが今はどうだろうなあという名前だったりするので、生きてるのかな死んだのかな、と呟くと、
「行方不明なの?」というので、
なんか、笑ってしまった。
 
あのさ。きみはもし電車の名前を聞かれて、どこを走っていますか、なんて問題だったら絶対にはずさないよな。でもそういう問題は、絶対出ない。
なのに花の名前はいつ咲きますかなんて聞かれたりするわけだ。
世の中は不公平に出来ている。
たぶん、きみの目には花なんてどれもこれも一緒に見えるんだと思うんだけどね。それは私が車を見て、どの車も同じに見えるのと一緒だと思うんだけどね。

菜の花、桜、あじさい、ひまわり、あさがお、コスモス、菊、さざんか、つばき、ぐらいはわかろうよ。日頃よく見ている花なんだよっ。