油断ならない

「ぼく、ママの本、読んだよ」って息子が言う。

え? なにを。

「パアララン・パンタオの」

まじかい。むずかしかったでしょ。

「いいや、読めたよ」

どうだった?

「文句なしだよ」

面白かった?

「面白かった。とくに、エラプ校の3階が、お金がなくて、柱と屋根しかつくれなくて、もちろん生徒は立ち入り禁止、壁がなくて風通しがいいから、ベイビー先生が洗濯物を干してたってところ」

そこかい。

「大人の人が読んだら、また違うかもしれないけど。ぼくはそこが面白い」

そっか。読んだのか。なんか、油断ならなくなってきた。隠しとかなきゃいけないものがたくさんあるような気がする。ありすぎてどうしてかいいか、わかんない。

「ママは親に反抗したんだよね」

とか聞いてくるし。しましたとも。毎晩、父と大喧嘩しましたけども、そういうことをきいてくるっていうのは、きみもそろそろそういうことをするぞっていう、予告でしょうか。

油断ならなくなってきた。