「ぼくが70歳になったころには、ママは死んでいるのかな」とふとつぶやいた息子が涙目。
うーん、死んでるよね。100歳超えて生きてる気はしないもん。
「それじゃあ、ぼくの老後はさびしいよ」
11歳の子が、老後の心配・・・。
でもそのころには、きみに、奥さんがいて子どもがいて孫がいて、にぎやかだよ、きっと。
「でもママがいない」
でもさ、もしもママいたとしてさ、すっかりお婆さんだし、認知症とかになってて、あんただれ、とか言ってるかもよ。あんただれ、息子だよ、息子ってだれ、とかさ。
「そんなのいやだ」と涙目をぱちぱち。
「じゃあ、ママ。ママが死んでもすぐ生まれ変わったりしないで、待っててよね」って言う。
じゃあ、次の世は同級生になる? 同級生だったら楽しいかも。
「うん、ぜったい楽しいよ。でもそれより、きょうだいがいいな。ママが妹」
ふうん、妹か。まあ、もし私が姉だったら、弟はいじめられるにちがいないので、それはいい判断だ。
でも兄妹だと、大人になったら、離れ離れになるよね。
「え?」
だって、兄妹は結婚できないし。
「え? できないの?」
え? 知らなかったの?


お互い、何かがショックで、沈黙した。