医師で被爆詩人の御庄博実先生逝去のこと。2010年、広島朝鮮学校での朗読会のときに、朗読された詩を載せておきます。
私、1984年と85年にハプチョンに行った。迷い込んだ食堂で泊めてもらった。その家のお母さんが12歳で広島で被爆していた。私と同い年の女の子がいた。先生の朗読を聞きながら、その後、訪ねたことのないハプチョンに、思いをはせたのでしたが。静かな声で、今でも思い出せる、ほんとうにすてきな朗読でした。
それから一昨年の夏に、戦後の広島の詩の運動、「われらの詩」の復刻版のなかで、先生の若いころの詩を見つけて、書き写して帰った。私、この詩、大好き。
ありがとうございました。
道程 御庄博實
この道を遠いといふな
この道を暗いといふな
氷雨はびたびたと額を濡らし
闇は凩を巻いて過ぎるが
胸内からこみあげてくるあたたかさにこころをふるはせ
肩を張ってこの坂道を登ってゆく。
たとへ幾年の歳月をへだてようとも瞼を伏せることはない。
これを愛といふものならば愛に
これをねがひといふものならばねがひに
わたくしのいのちを賭けよう。
わたくしの血潮を捧げよう。
(われらの詩 11号 1951/3)