自販機ごっこ

午後、担任の先生から電話。
ムーミンが息子のポケットにお金を入れようとしたことの謎について。

その日、お金をもっていたムーミンは、息子のランドセルを自動販売機に見たてて、ランドセルのすきまからお金を入れて、下に出てくるのを受け止めたり、あれ、出てこないと言ってみたり、して遊んでいたのだそうである。
それから、ランドセルじゃなくてポケットにいれてみたらどうだろうということになったり、近所の同学年のSも加わって、Sはお金をもっていないのに、お金を息子のポケットに入れたふりをして、でも、ポケットを見ても出てこないとか、したんだそうである。
Sがいたことは息子は言わなかったが、先生に呼ばれたムーミンが、ぼくだけじゃない、と言ったので、別のクラスのSも呼び出された。Sはふざけすぎだね。
息子は低学年の頃Sにいじめられたので、いまは関わらないようにしているし、Sも遊ぼうとする度に、こんなふうに叱られるはめになるので、この1、2年は近寄ってこなかったのだが。
それで「お金で遊んではいけません」とみんな叱られた。


自販機ごっこのことも息子は言わなかったが、では、バスを待つあいだだけでなく、バスを降りたあとも、ランドセルにお金を入れようとしたのは、ムーミンは自販機ごっこをまだつづけたかったということか。なんと。

さて、ここで難しいのは。
ムーミンは、息子も一緒に自販機ごっこで遊んだと思っていてそういうのだが(だから先生に言いつけられたことはもちろん不満である)、息子は、ムーミンが一方的にはじめた遊びなので、一緒に遊んだとは思っていない。ムーミンがぼくで遊ぶのをいつものようにがまんしていた、と思っている。

だってムーミンは、いつもぼくにべったりはりついて、ふりほどけないし、しつこいし、いいとか悪いとか言ったってきかないし、だからもういちいち言うのも面倒だし、でもお金をポケットに入れられそうになったときは、Sの悪ふざけもあったし、とてもいやな気持がして、ぼくは泥棒のぬれぎぬを着せられるのではないかと、危機を感じた、というところらしい。

ムーミンはそのあと一言も口を利かなかったそうである。

なんといえばいいか。
うちの息子相手に遊ぶのは、簡単といえば簡単だが、難しいといえば難しいかもしれないなあ。
仲良くなろうとしてくれた子どもたちが、かえって傷つくのを見るのはしのびないんだけども。

そうでしたか。挙動不審は、自販機ごっこでしたか。