忽然と消える

5日の朝、初雪。ちらほら降ったが、やがてやんだ。夕方になってまた降りはじめて、いま外を見たら、うっすら積もっている。寒いわけだなあ。f:id:kazumi_nogi:20171206020206j:plain

数日前、財布のなかを見たら、1万円札が消えていて、心が冷えたが、昨日は鞄がひとつ消えていることに気づいて、家のなかを探しまわった。
そういえば、ぼくが先輩からもらった「優先座席」のシールはどこにしまった? と息子が聞いてくるが、どこにしまったか、記憶がない。電車の窓などに貼ってある、ほんものの優先座席。
消えた1万円札は、洗濯済みの上着のポケットから、ひんやり濡れた状態で出てきて、ドライヤーで乾かした。昔、母が台所の窓に貼りつけて乾かしていたことを思い出した。母が死ぬ半年前、父から受け取った1か月分の給料をまるごと失くしてしまったらしいという話もついでに思い出したが、たぶん、生活への集中力を母はもう失っていたのだろう。まだ51歳だったのに。お金どころか命も忽然と消えてしまうものだよなあ、と思うとせつない。
1万円出てきてよかった。ほんとにほっとした。
鞄も、思いがけないところから、ふっと出てきた。何もないところから忽然とあらわれた、という感じ。
見つからないのは「優先座席」。たぶんさ、人生にそんなものはないから、消えてしまったんじゃないかな。でも、ないと思っててふっとあらわれたりしたら嬉しいから、ないのがいいと思うよ、いまは。…と息子に言い訳する。
息子はやさしい子なので、怒らない。
それにしても心配なのは、私の物忘れだ。片付けないとひどいありさまだが、片付けると、何をどこに片付けたかが、全然わからなくて、また大変なのだった。
お願いです。大切なものが忽然と消えてしまったりしませんように。必要なものは、どうか忽然とあらわれてくれますように。