2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

樹 尹東柱(ユントンジュ) 樹がおどれば かぜがふき、 樹がしずまれば かぜもやむ。 伊吹郷訳 『空と風と星と詩 尹東柱全詩集』 向かいの森から葉っぱが風に吹かれて飛んでくる。すこしずつ紅葉もはじまっている。今日で9月も終わる。

すてきね

「となりのトトロ」のなかに、「おとうさん、すてきね」というセリフがある。この「すてきね」という言葉が、すてきに作用することに、子どもは気づいたらしい。いたずらがみつかったとき、叱られそうになったとき、甘えたいとき、わがままをとおしたいとき…

壊れてからが

スーパーで買い物する度に、シールを地道に集めていたという義母が、そのシールを貼った台帳を息子に渡したのを、しばらく忘れていて、たしか子どもが生まれたころに、100冊近くたまっていた台帳があることに気がついたのだ。それで、必然的に、台帳は子…

移転の話

ゴミの山の学校の移転の話。 フィリピンのゴミの山、パヤタス地区のゴミ山を拡大するために、私たちが支援するフリースクール「パアララン・パンタオ」(パヤタス校)を含む周辺住民265世帯が立ち退きを迫られている。立ち退きの条件について、当局と折り合…

緑いろの指

庭は金木犀のいい匂いがしている。 中学校の表門までは歩いてほんの10分ほどの道のりだった。でも普通の道とは別に、遠い海の町から市内の高校に通う生徒のための寮の中庭を通り抜ける近道があって(通り抜け禁止ではあったが、守るはずもなく)、その近道を…

蟻とコオロギ

朝、玄関の石段の上に、ずいぶん大きなコオロギがいた。私の人差し指の長さくらいはありそうだった。近づいたら逃げるかと思ったのに、逃げもせず、だるそうにすこし動いた。 夕方、朝のコオロギにちがいないが、もう頭もなくなって、体も半分ばかり引きちぎ…

新幹線

午後、新幹線の駅まで新幹線を見に行く。田舎にできた新幹線のためのごく小さな駅には、数人の乗客のほかに、あきらかに子どもに新幹線を見せるためだけにきている親子連れが数組いて、私たちもそのなかの一組だ。 ところで、新幹線は速い。その駅に停車する…

彼岸花

庭に赤とんぼがきている。足もとを、尻尾の青いとかげが走っていく。金木犀の香が漂っている。きれいな秋の季節になった。今日はほんとうにきれいな秋晴れ。 田んぼの畦には彼岸花が咲いている。この花の赤さは、なんというか、鬼気迫る。たちまち思い出すの…

金木犀

金木犀が咲いた。庭はいい匂いがしている、はず、と思って外に出たら、便所の汲み取りさん来たらしく(このあたり、まだ水洗ではない)、まあ、そのような匂いがしている。花の香は木のところまで行って、嗅いでくる。 13歳の誕生日に、そのころときどき遊び…

台風一過

台風一過の18日の朝は、雨もやんで予定通り、町内会の大掃除だった。山から飛んできた葉っぱが道に散らばって、それなりに掃除のし甲斐はあった。 午後から、山口の義父母のところへ。空をヘリコプターが飛んでいるのは、大雨で行方不明になった記者さんが…

暴風域

昨夜の大雨は、ここからそんなに遠くないところで、死者ひとり行方不明者ひとり。朝からヘリコプターが飛んでいた。昼間は雨も風もなかったけれど、夜になって雨、そして、ものすごい風。台風13号、かずみちゃんがきている。 もうかれこれ2時間近く暴風域…

大雨警報

大雨警報が出ている。すごい雨。太鼓の音をずっと聞かされている感じだ。テレビの画面に大雨情報がテロップで出るのを、ずっと見ている。このあたりの高速自動車道は通行止め。川の支流が合流するあたり、ここからそんなに遠くないところで、避難勧告。川土…

髪を切る

台風が近づいてくる、という雨。夜からずっと降っている。今日、義父母のところへ行く予定だったけれど、延期にする。 昨日、子どもの髪を切った。じっとしてくれていたのは最初の数分だけ。首にまいたタオルも新聞紙も振り払って逃げ出してしまった。一番気…

9月の空

近くまで行ったのでついでに足を伸ばして、空港へ飛行機を見に行った。30分ほどの間に、まずヘリコプターが飛び立ち、それからチャイナエアラインが飛び立ち、つづいてANAが飛び立った。「ひこうき、とんだねえ」。子どもに飛行機を見せながら、飛行機…

帽子

ミシンを踏んで、という言い方はもう正しくない。ミシンはもうとっくに踏むものではなくなっているから。ミシンを動かして、ミシンで、子どもの帽子をつくった。 子どもが生まれた日に夫が着ていた緑のチェックのシャツは、そのときすでに首のあたり擦り切れ…

つゆ草

雨が秋を運んできたらしい。 庭の金木犀の花が、ほんの3つほどだけど、咲いている。たぶん例年より2週間くらい早い。 向かいの森の草はらは、たくさんのつゆ草。青い花の色が、雨にぬれてものすごくきれい。こんなにきれいなものの咲いているところに生き…

ヤモリの干物

部屋がくさい。二階の、本棚と机とパソコンを詰め込んでいる作業部屋。はげしく不快、というほどではないが、何か臭う。窓をあけると、そのときは消えたようなのだが、気がつくとまた臭っている。汗の臭いのような、何か果物でも腐ったような、少し甘ったる…

まっくろくろすけ

子どもは、文房具を入れているカンカンの蓋を勝手にあけて、なかから油性サインペンを取り出して、紙に落書きをしていた。お絵かきしているなあと思っていたのだが、しばらくたっても、あまりしずかなので、見ると、足の指の爪を10個、真っ黒に塗っている…

せいかい

住宅街でイノシシ逃走、捕獲。このニュースはどこかしらと思って見たら、広島で、昔住んでいたところからひとつ川向こう。街のまんなかあたりだ。 このあたりは街のはずれもはずれだから、イノシシは道ひとつ隔てた向かいの森を夜中にごそごそ歩いていたりす…

虫の食卓

夏の間、昼間は暑いし、夕方は雷雨夕立、蚊が湧くし、で、庭の手入れをさぼっていた。歩くと顔にからまりそうな蜘蛛の巣をとるのと、玄関先の雑草引きぐらいはしたけど。でもだいぶん涼しくなってきたので、久しぶりに、蜘蛛の巣をとりながら見てまわると、…

空ゆく雲の

雲のかたちが変わってきた。もう夏の雲ではない。風にのって流れていく。 「あまり言葉のかけたさに あれ見さいなう 空行く雲の速さよ」(閑吟集) 高校生のころ、梁塵秘抄や閑吟集が好きで、世阿彌の謡曲も好きで(それは山崎正和の戯曲「世阿彌」の影響だった…

機械とのつきあいかた

パソコンが変わった。いままでは8000円の中古のノートパソコンを夫が使えるようにしてくれていたのを使っていた。画面に小さな黒い傷が入っていたり液晶がはがれていたり、何より起動が遅くていらいらさせられたが、動いているのが奇跡のようなものだか…

ミシン

無料でミシンのお手入れします、という。電話なら断るのだが、訪問だし、気持ちのいい人だったので、見てもらうことにする。埃をとって油をさして、むろんそれが目的ではなく、新しいミシンの営業に来ているのである。そのミシンはいろんな刺繍ができる。そ…

烙印

季節が過ぎたあとはすっかり忘れていた庭のプランターに苺が2つ、小指の先ぐらいの小さなのが実っていた。1つはすでに虫に食われていたので1つ収穫。子どもに見せたら、たちまち食べられた。 自我のはじめは、所有の「の」らしい。2歳10か月になった息…

宛名書き

数日、ゴミ山のフリースクールのニュースレター発送のための宛名書きをしている。11年前から変わらず、手で書いている。パソコンでやればいいのに、と言われるのだが、それに決してきれいな字ではないのだが、手書きにこだわるには理由があって、手で書か…

くすのき

街へ出たついでに平和公園で子どもを遊ばせる。鳩と雀と鴉が遊んでくれる。鳥たちが地面をしきりについばんでいるので、子どもも気になるらしい。地面の砂をつまみあげて、鳩にあげるつもりで追いかけると逃げられる。つぎには砂を自分の口にいれようとする…

九月の静寂(しじま)

1日じゅう雨。しずかに降りつづいた。花ざかりのシュウカイドウの桃色が雨に濡れてきれいだった。ユリオプスデージーの黄色、白い槿、ブルーセージの濃い青の色。小雨のなか、庭に赤とんぼがきていた。 今日から九月。ふと「あの日と同じ九月の静寂(しじま)…