新幹線

 午後、新幹線の駅まで新幹線を見に行く。田舎にできた新幹線のためのごく小さな駅には、数人の乗客のほかに、あきらかに子どもに新幹線を見せるためだけにきている親子連れが数組いて、私たちもそのなかの一組だ。
 ところで、新幹線は速い。その駅に停車する新幹線もあるが、通過するだけの新幹線もある。停車するのはいいのだが、停車しない新幹線が、びゅんびゅん飛んでいく。相当こわい。しかも子どもはプラットホームをうろうろ歩いたり走ったりするのである。生きた心地がしなかった。ほんの5年前まで、あのびゅんびゅん飛ぶものに乗って、東京から帰ってきたり、また東京へ戻ったりしていたのだとは、にわかに信じがたい気分。
 子どもはこわがりもせず、パパに抱っこされて「しんかんしぇーん」を見ている。新幹線なんて、絵本のなかだけで十分だ、と私は思う。
 それにしても、空のきれいな秋の日だった。