2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

白バラの祈り

『白バラの祈り』という映画が東京のほうで上映されているようだ。とても評判みたい。そのうち地方にもくるだろうが、映画館に観にいくのは無理かなあ。ここから市内の映画館に行くのは一日仕事。その間、子どもを預けるところもない。子どもひとり生まれて…

親の力だけで子どもを育てられない

午前中、地域の集会所で女の人たち集まってトンボ玉のネックレス作り。別に、興味があるわけではないし、つくっても身につけることはないんだけど。去年、老人会で(世話係の当番で)つくった余り布のコサージュも暖簾に飾られたまま埃をかぶっている。 夕方、…

魂は、曲がりくねった小道を行く

二紀展の券をもらったからと、友人が誘ってくれたので、久しぶりに美術館に行く。子どもは、絵のなかになじみのものを見つけては、「ジョジョ(雪)」「ブッブー(車)」「シッシッポ(電車)」「パオ(象)」などなど叫ぶ。作品に触れようとするから目が離せない。…

客人

昼間、義父母が、あれこれの差し入れをもってやってくる。途中の道の駅で買った野菜や果物。いつもいつも切実にありがたい。子どものものも、おむつもミルクもいつも義母が買ってくれて、私は今にいたるまで、ミルクの値段も紙おむつの値段も知らないという…

龍の目

昨日、久しぶりに庭仕事をする。といっても枯葉枯れ枝を拾い集めたのと、鉢に水をやったのと、ぐらいだけど。龍のひげ、というのかな、緑の草に、小さな青い実がなっていた。龍の目かな。 しゃがんで土をさわってみなければ、気づかずにすぎてしまうところだ…

ヨnglish

お風呂のマットはプーさんのアルファベット。湯につかりながらぼんやり見ていて、逆さに見ていたから、Eはヨだった。 中学生になったとき、私はアルファベットの読み書きができなかった。なんといってもはじめてアルファベットを見たのだ。小学校のときにロ…

欲しいものは

「おまえの欲しいものはみな目の前に現れるだろう。たとえ、おまえの欲しいものが、おまえのもっとも欲しくないものでもあるとしても!」 残雪『魂の城 カフカ解読』 たしかに、そうである、と思う。私に都合のよい幸福が来ないときにも、私に都合のよい不幸…

カフカ的?

あと4か月と医者は宣告したが、父は信じなかった。むしろ、母は回復すると、いっそうかたくなに信じた。奇跡はおきて医者もびっくりするに違いない。もし回復しないとしたら、それは自分と一緒に奇跡を起こそうとしなかった役立たずの子どもたちのせいなの…

△の話

毎日少しずつ、子どもの言葉が増えている。 昨日子どもは、はじめて「ウンチ」と言った。事後報告だが、初申告である。大変めでたい。 生後2か月で、ウンチをしなくなった子どもだった。しょうがないので、一日おきに私が浣腸でさせていた。1歳近くになっ…

時計を背負った少年

何日か前、図書館とブックオフに行った。子どもは館内店内をうろうろ歩き回り、壁に時計を見つけては大きな声で「チクチクボン、チクボンボン」と叫び、本棚の仕切りのプラスチックのボードを「あ」「い」「う」と読みながら一枚一枚引き抜いていた。迷惑な…

木を植える人

ジャン・ジオノの『木を植えた人』という物語は、文字通り、死ぬまでひたすらに木を植えつづけ、荒地を森にかえつづけたという男の話。木を植える、というそれだけ。これ以上ないくらいシンプルな話だが、シンプルに生きるには勇気がいる。 ジャン・ジオノの…

残雪の『魂の城』を手引きに、カフカを読み直そうと思って、本棚の奥から引っ張り出してはみた。 30年くらい前の文庫本は、紙の色が茶色く変質している。学生の頃、卒業する先輩か、下宿の隣人にもらったもの。本には見覚えがあるが、内容を思い出せない。…

「言葉のゆっくりな」

昨日の午前は、保健センターの親子教室に行く。いつもより少なくて3組の親子と4人の保健士さんたち。招待されているのは、保健士さんの言い方だと「言葉のゆっくりな」子どもたち。 みんなの前で名前を呼ばれると、私の子どもはそっぽを向いて逃げ出してし…

紫の布

夕方のローカルニュースを見ていたら、江戸時代から大正にかけて地元の特産だった、山繭紬を80年ぶりに復活させようとしている、という話。ヤママユガの繭から糸をつむぐのだが、その、ヤママユガの繭の色が、きれいなうすみどり、春の若葉の色で、思わず…

ビンボン

ときどき育児サイトをのぞいたりすると、2歳児というのはけっこう達者に喋ったりするんだと、驚く。私の子どもも喋らないわけではない。おなかがすいたら「くう (食う)」と言うし、階段をのぼるときは「アップ、アップ」となぜか英語で掛け声をかけている。…

月天心

ぴっかぴかのお月さま。満月かな。さっきゴミ捨てに出て見とれた。 与謝蕪村の「月天心貧しき町を通りけり」という句が、とても好き。 ゴミの山のスラムにつづく坂道を、夜、レティ先生と歩いた。94年の12月。 あの日は、日本からの寄付を受け取るために…

ゴミ山のナイトメアたち

もしかしたら、と思っていたけど、やっぱり。「こころの世紀 女という名の病 (心理学者・小倉千加子)」 http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/kokoro/onna/ の29回目は、ナイトメアの父親が、娘に性的な関わり方をしたことを伝えている。 フィリピンのゴ…

もえよ 木の芽のうすみどり

朝からずっと雨。しとしと降りつづいている。年末から消え残っていた庭の雪もほとんど消えた。 木々は雪のなかでも、その芽をつのぐませていたようで、青い花さく紫陽花は青く、赤い花さく紫陽花は赤い色に、小さな葉の塊が芽吹いている。 去年ぐらいから成…

色素星人

午前中、市民病院に行く。小児科でエコー検査。 子どもの背中や腹に出現したいくつもの小さな痣が、色素性蕁麻疹(肥満細胞症)と診断されたのは生後8か月のとき。最初に病名を聞いたとき「色素星人マシン」と頭のなかで変換されたのは、きっと、ふだんは薄い…

地下駐車場

午前6時。回転しながら眠る子どもに、ふとんから蹴りだされてしまった。目が醒めてしまったので、起きる。 2か月ほど前に、「あいうえおボード」をもらってから、あきれるほどしつこくそれで遊んでいた子どもは、いつのまにか、いくつかのひらがなを読める…

『魂の城 カフカ解読』 

『魂の城 カフカ解読』 (残雪(ツァンシュエ)著 近藤直子訳 平凡社) という本を読みはじめた。読み始めて数ページ目で、次のような文章に出会う。 「ひとりこの世にやってきた者は、精神的な「孤児」の段階を経なければ、成長、成熟して自己の世界を発展させ…

成人の日のこと

昨日は成人の日。テレビのニュースを見て知った。 20歳のときの成人の日のことを覚えている。その日もいつものように、街なかの喫茶店で働いていた。学生だったが、自活していたので、平日は夜、土日は一日、あれこれのバイトをしていた。 忙しい日で、し…

マクドナルド

子連れの外出は疲れる。といって、子どもを置いてどこにも行けない。 車のなかではチャイルドシートをいやがって泣き叫ぶし、車を降りると、家のなかではあんなに走り回る子が、すぐに抱っこをせがむ。抱っこしないとその場に座り込んでしまう。そうして11…

海に降る雪

ずいぶん前のことだ。冬に、山陰地方に遊びに行った。バスで中国山地に入っていくと、思いもよらない雪景色で、こんなにたっぷり雪は降っていいもんだろうかと、めったに雪の降らない地方で育ったものとしては、なんだか不思議なようだった。 海辺の雪を踏ん…

まーめー

もちろんそれは、時間の問題ではあったのだが、子どもは「だめ」という言葉を言うようになった。この親とつきあうのに、「いーよー」だけではやっていけなくなったのである。一番最初は、呑みたくない薬を、むりやり口の中に入れられて、ぐしゃぐしゃの泣き…

冬の火事

凍土に花の咲かずと嘆く半歳はおのれが花である外はなし (中城ふみ子) 東京より北で暮らしたことはないから、雪のつらさおそろしさは知らない。中城ふみ子のこの歌にこめられた思いの深さも、きっとほんとうにはわからない。一度3月に北海道に行ったとき、…

もうひとりの私

父母の眠った夜更けに、ときどき足音をしのばせて表に出たものだった。中学生や高校生だった頃。裏山の木々が、風にざわざわ鳴るのを聴き、道端に寝転んで、星を見た。夏は向かいの田んぼの蛙が鳴いていた。月明かりに、電線が五線譜のように浮かぶのを、ド…

「存在しよう!」と

「存在しよう!」と心に決めた以上、 欠乏がこの世にあるなどという迷いにおちいるな。 絹糸よ、おまえは織物の一すじなのだ。 たとえおまえが心の中でどのような模様に織り込まれていようと (たとえそれが痛苦の生の一こまであろうと) 讃めたたうべき壁掛け…

ジョジョ

新年、子どもの第一声は「かいーよー」だった。親たちの第一声は「くすり、くすり」だった。体が温まったり、こすれたりすると、皮膚が発赤して痒いのである。 塗り薬のほかに、飲み薬もある。咳止め、抗生物質、アレルギーの、ピンクと白と黄色の粉薬。ヨー…

寒天

父方の祖母に最後に会ったのは、6年前の正月だった。帰省したら、たまたま弟も帰省していて、むりやり連れて行かれたような格好だった。 弟は人なつっこくて、何年何十年会っていなくても、気軽に親戚の家を訪ねていく。私はそうではない。18歳で家を出た…