時計を背負った少年


 何日か前、図書館とブックオフに行った。子どもは館内店内をうろうろ歩き回り、壁に時計を見つけては大きな声で「チクチクボン、チクボンボン」と叫び、本棚の仕切りのプラスチックのボードを「あ」「い」「う」と読みながら一枚一枚引き抜いていた。迷惑なことだった。
 そういえばむかし、時計を背負った少年を見たことがあると思って、考えていて、思い出した。中学生のころ好きだった詩だ。

   「青い夜道」 田中冬二

 いっぱいの星だ
 くらい夜みちは
 星雲の中へでもはひりさうだ
 とほい村は
 青いあられ酒を あびてゐる

  ぼむ ぼうむ ぼむ

  町で修繕した時計を
 風呂敷包に背負った少年がゆく

  少年は生きものを 背負っているやうにさびしい

 ぼむ ぼうむ ぼむ……

 ねむくなった星が
 水気を孕んで下りてくる
 あんまり星が たくさんなので
 白い穀倉のある村への道を迷ひさうだ