2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

青い象

向かいの森の新緑がとてもきれいな日だった。夕方、一時雨。夜になってまた雨。 欲しかった絵本が届いた。うれしい。『ワイルドスミスのABC』(らくだ出版)。 子どもが生まれて楽しいのは、絵本を買えること。といってもお金はないから、ブックオフで10…

笑い声

図書館で借りて読んだ『すべてきみに宛てた手紙』(長田弘)。 そのなかの「手紙8」は何度も読み返した。短いので全文書きます。 「行きどまりと思ったとき、笑い声が聞こえてきた。北宋の詩人、秦観は一篇の詩にそう誌しています。 菰蒲(こほ)の深き処 地無…

つるばら

どこかに遊びに行きたいようないい天気。 風邪のせいだろうが、ついに昨夜から声がでなくなった。けれども子どもは、絵本を抱えてきて「ぐり、ぐら、ぐり、ぐら」とうるさい。しかし、声が出ないのだから読めない。「ぐりー、ぐらー」が次第に泣き声になり、…

これが春

私が咳をすると真似していた子どもが、真似でない咳をはじめて、鼻水も数日出ているし、夕方、小児科医院に連れていく。熱はないし元気だし、たいしたことはなさそう。近所の男の子も来ていて、けっこう混雑していた。 薬もらってくる。これをのませるのが大…

チェルノブィリ

曇り空だったか、小雨がぱらついていたか。雨模様の空だったような気がする。20年前の4月26日。でも記憶違いかもしれない。雨合羽を着た女の子を見たから、記憶の空が、雨模様になっているのかもしれない。 その頃、広島で暮らしていたのだが、その日私…

風邪

風邪。寝ていたいがそうもいかない。寝ていると子どもがやってきて、「すわって、すわって」と泣くのである。すわると、「ぐり、ぐら、ぐり、ぐら」と絵本をもってきて膝にのせる。「ぐりとぐら」の絵本。声の出ないこんな日に、そんな長いお話を読まされた…

墓参

知人の墓参りに行く。墓苑はここよりずっと北にあるので、桜はいまが満開。つつじ、れんぎょう、雪柳。田んぼには水が張られはじめ、田んぼののり面には芝桜。山里の春の景色がきれいだった。 もう6年になるのだと思う。享年76歳。K老人は、私が心から信…

しゅき

いったい子どもは、1日に何度、「ママしゅき、パパしゅき」を言っていることか。子どもの「しゅき」をうっとりと聞いたのは、最初の数日で、次第に、この「しゅき」はなかなか曲者だと思うようになった。 いたずらをして叱られそうになると「ママしゅき」と…

帽子

私が新しい帽子をかぶっていると、子どもも自分の帽子をかぶるようになった。お出かけ、となると、雨でも夜でも帽子をかぶる。ところが昨日の朝、出かけようとすると子どもの帽子がない。青い縞模様のチューリップハット。探したけれど見当たらないし、子ど…

荒地

「四月は残酷極まる月だ」。きっと1度読んだら忘れない、T.S.エリオットの詩の1行。 四月は残酷極まる月だ リラの花を死んだ土から生み出し 追憶に欲情をかきまぜたり 春の雨で鈍重な草根をふるい起すのだ。 (『荒地』Ι埋葬/西脇順三郎 訳) 残酷極まる…

花に嵐の

昨夜来の風雨で、向かいの桜もあらかた散った。「花に嵐のたとえもあるぞ/サヨナラだけが人生だ」と井伏鱒二の訳詞を思い出したりする。 コノサカヅキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ 井…

春の月

ふるさとや石垣歯朶に春の月 (芝不器男) 永き日のにはとり柵を越えにけり 春のふるさとを思うと、まず不器男のこの2つの句が浮かぶ。私の郷里の俳人であることもあるが、ほんとうにこのとおり。もしたった一言でふるさとを語れ、と言われたら「石垣歯朶に春…

こいのぼり

かつて出かける子供がいた ホイットマン かつて毎日出かけていく子供がいた そして目をとめた最初のもの、そのものに彼はなった、 そしてその日一日、あるいは一日のある時間、 あるいは何年ものあいだ、あるいはうちつづく幾時代ものあいだ、そのものは彼の…

羽がふる

昨日は晴れた。とても久しぶりの青空。朝、外に出ようとすると、子どもが「サクラ、ミヨウ」と追ってくる。 庭に出ると鳥の声に、「トリ、ナキ」と言う。「行く春や鳥啼き魚の目は泪」(芭蕉)とつられて口ずさんで、「行く春」の早さ、庭の草花が日に日に成長…

「あいうえお」と「ABC」

1日じゅう雨。午後、義母とデパートで待ち合わせ。食事のあと、幼児用のパズルなど安売りしていたので見ていると、子どもがプーさんのアルファベットのパズルを欲しがり、おばあちゃんが買ってくれた。 そろそろ2歳半になるのだが、この半年ほどの成長ぶり…

お絵かき

そんなに遠くないところで、週に1度、就学前の子どものためのサークルを集会所で開いているというので、子どもを連れて行ってくる。1時間半ほど遊んできた。 子どもは、ほかの子が遊んでいるおもちゃばかりを掴もうとする。きっと、おもちゃしか目に入って…

あはれ花びらながれ

甃のうへ 三好達治 あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ をみなごしめやかに語らひあゆみ うららかの跫音(あしおと)空にながれ をりふしに瞳をあげて 翳(かげ)りなきみ寺の春をすぎゆくなり み寺の甍(いらか)みどりにうるほひ 廂々(ひさしひさ…

ミモザ

庭のミモザが咲いた。といっても、細い痩せた木の先に、数えれば数えられるほどの、ほんのわずかの、小さなけぶるような花をひらいてくれた、というだけなのだけれど、例年、秋頃に虫の食卓になってしまうのが常だったから、生きのびて、わずかでも咲いてく…

草に すわる

草に すわる 八木重吉 わたしのまちがいだった わたしの まちがいだった こうして 草にすわれば それがわかる 夕方の教育テレビの「にほんごであそぼ」の「今日の名文」は八木重吉だった。夕方、耳にとめたときには、あ、八木重吉、と思っただけだったのだが…

夕ざくら

雨の音で目が醒めた。昨日からずっと雨。これからまた激しくなるみたい。 昨日の午後郵便局へ。ニュースレターの発送終える。一段落したので、夕方、子どもとふたりで2階の窓から花見をする。私は水割り。子どもは水。胡桃のかけらを、握った両手のどちらか…

記憶の草地

向かいの森の桜が花ざかり。大きなモミの木の後ろに、ソメイヨシノの巨木が3、4本は並んでいるようで、山の緑を背景に、はなやかなのにひっそりと咲き誇っている。2階の窓からの眺めが、ただもうきれい。子どもが、「サクラ、サクラ、ホケキョー」という…

詩人の名前

たぶんもう、3年ぶりぐらい、久しぶりに宇品港に行ってみた。以前はほんとうに殺風景な、何にもないところだったのに、釜山へのフェリーが就航してから、港はすっかり様変わりしたようで、新しいビルは出来ているし、海に面したテラスは、散歩にちょうどい…

つくしんぼ

つくしんぼ 兵頭明 いけのそばのみちで つくしんぼが そだっていました きょう とりにいって すこし とってかえりました 『どろんこのうた』(仲野猛編著)所収。 いい天気。出かけたついでに山のほうへつくしを採りに行く。去年見つけた密生地。行ってみると…

花より鳩

花 丸岡リカ はな はな はな とった はい 『どろんこのうた』(仲野毅編著 1981年)所収。愛媛の知能障害児施設の子どもたちが、ねんど板に書いた詩をまとめたもの。学生の頃に読んで戦慄したのだけれど、これは永遠に忘れないな、と思ったのが、上の詩。…

さくらサク、さかなサカナイ

朝起きるなり、子どもは「さかな」と小さく叫んで外に出て行こうとする。ああ、ちびさん。さくらは咲くけど、さかなは咲かないんだよ、と言ってみて、さくらサク、さかなサカナイ、の語呂のよさに、子どもが言葉を取り違えるのも無理ないか、と思った。雨模…

桜と寿司

向かいの森の桜が、咲きはじめた。(大きな桜の木が数本あるのだ)。そういえば去年のこの時期、子どもはまだ歩きはじめたばかりで、桜降るなか、家の前の坂道を、よたよたよたよた歩いていた。 今日も軒下のブロックに並んですわって「桜、咲いたよ」と子ども…

おとみさん

おとみさん、と名付けた。庭の真ん中に切り株だけの木があり、きっと枯れたから切られたのだろうが、切り株から細い枝が伸びて、2つばかり小さな蕾をつけていたのが、花開いた。紅梅。 とすると、この庭はもとは紅梅白梅並んで咲いていたのでしたか。 狭く…

すわって、すわって

朝、子どもが外に出たがる。雨だから、といっても聞かないので、一緒に庭に出ると、軒下の、植木鉢を並べてあるブロックの空いたところに、「すわって、すわって」と言いながら自分がすわった。そうして、横の植木鉢に「おんり、おんり」と言っているので、…

辻邦生

郵便受けに入っていたチラシに、月々の支払い300円、とあって、それならETCを買ってもいいと、車の部品など売っている店に出かけた。店は混んでいて、取り付けに時間がかかるというので、その間、近くの図書館まで歩いて行った。 こういう小さな図書館…

春の朝

春の朝 (ロバアト・ブラウニング) 時は春、 日は朝(あした) 朝(あした)は七時、 片岡に露みちて、 揚雲雀(あげひばり)なのりいで、 蝸牛(かたつむり)枝に這ひ、 神、そらに知ろしめす。 すべて世は事も無し。 『海潮音』(上田敏)におさめられたあま…