2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

旅の途上

どうかして自分という存在を消してしまえないものかと思っていたのは十代の半ば頃。存在するということそのものが、何かしら耐えがたいことと思えた。今ある私だけでなく、他人の記憶のなかに残っているかもしれない私についても、この世に存在したことの痕…

夜汽車

「時が、われわれの本当の判定者である。誕生と死を分かつものは、秋に散る葉、通り過ぎる雲、飛ぶ鳥、夜の闇の中を急ぐ列車、微笑み、涙、やさしすぎることの痛みである。」 『カメラの旅人 ある映画人の思索と回想』ポール・コックス著 「ある老女の物語」…

次の段階

気がつくと台所のテーブルに玩具の車が列をなしていて、車の上にコップの水がかけられたりしているのは、「あめのひのぶっぶー」なんだそうだ。ごはんを食べるのにじゃまなので、ここで遊んではいけないと、毎日のように言うんだが、言うことをきいてくれた…

どんなふうに老いるにしても

昨日は、あれこれの用件を片付けに街に降りた。郵便局税務署銀行とまわった後、知人の老夫婦のところに寄る。寝たきりになったおばさんを、80歳になるおじさんが介護している。どんな日常も、ただごとではないなあと思う。 昔バイトしていた店でごはんを食…

ふきのとう

天気もいいので、昨日の午後は庭の片付けをしていた。落ち葉や枯れ枝を玄関横に積み上げたままにしておいたのを袋に詰めて、ついでに庭の土も掘り起こして肥料をまいてやった。鉢植えの紅梅が咲いたし、庭の白梅もつぼみがふくらんでいるし、枯れていたはず…

相談室

しばらく前に保健士さんがやってきて、保険センターの相談室に来ませんかというので、断る理由もなく、何を相談しに行くのだろうと思いつつ、指定された日時の昨日の午後、行ってみると「ことばとこころの相談室」と入り口に書いてあった。 そうえば2歳にな…

最後の

葬儀の日は雨。「おばあちゃんお花どうぞ」と子どもが棺に花を入れる。生きてる間には、花束ひとつ差し上げることができませんでしたが。 「わたし上手に死んどったでしょう」そう言ってあなたが笑うような気がする 野樹かずみ

張のお母さんの死

張のお母さん、と呼んでいた人だった。15日に亡くなった。交通事故。にわかに信じられないが、思えばずっと、お母さんには驚かされてばかりだった。はじめて会ったのは、学生のときだから、もう24年ほどにもなる。私の母親は18歳のときに死んでいるの…

幸福な土地

なんだか春の日差しだ。ぽかぽかしている。でもときにすごい風。 昨日は小雨のなか、街へ降りる。ここは山のほうなので、どうしても、降りる、という表現になるのだが、最近、街に降りると疲れる。空気の悪いところへ来たなあとまず思う。街中で、かれこれ2…

飛行機雲

区役所に印鑑証明をもらいに行って、天気がいいので、帰りに運動公園に遊びに行った。すべり台とぶらんこのほかは、遊具もないので、すべり台とぶらんこをする。 子どもは、体はそんなに大きくなっていないのだが(1歳や2歳の子とあまり変わらない背丈だ)、…

数字!

目を通す度に、間違いが見つかる。数字ひとつの間違いでも、その計算のすべてをやりなおさなければならず、それに関連するページすべてを書き換えなければならない。毎日毎日、資料をつくりなおしている感じだ。なんか泥沼。吐きそう。 たとえば、建物の広さ…

「臺灣萬葉集」

「臺灣萬葉集」という本。本棚に並んでいるのが目にとまる。下巻のみ。あとがきの日付が1992年10月とあるから、きっと93年のはじめころに送られてきたのだろう。台湾台北市の孤蓬萬里氏から。その後、この本のことはよく知られるようになり、日本の…

一つの鍵が

あれは奇妙に寒い夏だった。真夏でも長袖でいたし、本州の北のほうまで行くと、9月なのに、ときどきはストーブを焚いていた。その夏に、北に住んでいた人が教えてくれたのが、嵯峨信之の詩だった。机の上に詩集が置かれていたので、「何がいい?」と聞いた…

冬の蝿

昼間庭に出たら、地面でゆれる日差しがなんだか春だ。音がするほうをみたら、蝿が一匹、まるまるふとったのが、バラの枝あたりをとんでいた。 去年の豪雪が嘘みたい。このあたり、毎年2週間ぐらいは雪があるのに、今年は降っても積もらないし、もちろん雪か…

おなかがすいた

1ペソ=2.5円。 申請書の書類に記載しなければならない見積書の計算、子どもにごはん食べさせるのも忘れて、電卓を叩いていた。 家ではおとなしくごはんをすわって食べたことがない、すぐに向こうの部屋に遊びに行ってしまうだけあって、子どもはごはん…

文体とか言葉とか歴史とか

ゴミの山の学校の支援のこと、助成金の申請をしようかと思いたって、申請書の説明を見ているのだが、なんだかとほうもない。 支援をはじめた12年前、ちょうど不況で、あちこちのNGOに聞いても、助成金を減らされたとか打ち切られたとか、景気のよくない…