次の段階

 気がつくと台所のテーブルに玩具の車が列をなしていて、車の上にコップの水がかけられたりしているのは、「あめのひのぶっぶー」なんだそうだ。ごはんを食べるのにじゃまなので、ここで遊んではいけないと、毎日のように言うんだが、言うことをきいてくれたりはしない。
 昼にお好み焼きをつくるのに、粉を混ぜていて、「くるくるまぜまぜ」とごきげんで混ぜていたのが、ふとしずかで、キャベツを切っている間にいなくなっているのを不審に思ったりはしたのだ。見ると、一台だけテーブルに残っていた車の上には水でといた小麦粉がべったり。
 
 ものごとは次の段階にすすんだらしい。きっとそれは、ちびさんの頭のなかで、昼ご飯から晩ご飯の間の数時間をかけて準備されたのだ。晩ご飯のとき、いつものことながらおとなしくすわって食べたりしない、口のなかにご飯をつめこむと、向こうの部屋に遊びにいったが、そのまま帰ってこないので呼びにいくと、部屋のすみに車が列をなしているんだが、何かへん。車の上にのっている白いものは何か。
 「なにしたの」と聞くと、子どもは両手で顔を隠してうずくまるから(これがかわいいのだが)、悪いことをしていた自覚はあるらしい。チューブのニベアクリームを車の上にしぼりだしたらしいのだ。ゆきのひのぶっぶー、なんでしょうかね。しかも、そのニベアクリームは、子どもの背より高いところにある引出しにしまってあるのだが、きちんとふたをしてもとにもどしてある! ふたのふちにクリームがべったりついているのが、ちびさんの犯罪を証明しているわけだけど。
 
 こういうむずかしいことは、まだできなくていいからさ、自分でスプーンをもってごはんを食べてほしい、と思う。
 こないだはスプーンより箸をほしがるから、いきなりお箸をもつつもりだろうかと思ったら、箸をプラットホームにみたてて、翼のとれた小さいスペースシャトルを新幹線にみたてて、遊びだすし。
 
 夕方、ポストに手紙を出しに行った帰り、ふきのとうとみつばを摘んで帰る。味噌汁の具ぐらいは、野山で調達できる季節になった。