2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

薔薇の根

庭のプランターの苺が色づきはじめた。最初の1個は子どもが食べた。明日ぐらいには、また何個か摘めるだろう。うれしい。「いちご、いちご、おみずどーじょ」と子どもが水やりしていた苺。 つる薔薇の赤い花が咲きはじめた。去年は屋根の上まで伸びて、花の…

おやすみの前に

子どもが毎日遊ぶパズルは4種類、140ピースほど。毎晩これを拾うのがたいへん。私がピースを探すのに、「いっこたりない、いっこたりない」と言っていたからだろう。片付けていると、子どもが「いっこたりない」と笑っている。口真似しているのかと思っ…

あめがふります

2歳半になる子どもがときどき童謡の絵本をめくっている。うろおぼえの歌を、あやしげな発音とあやしげな音程で歌っていたりする。 とすると、あのとき私もこれくらいの年齢だったのだろうか。 最初の家にいた頃だから、5歳になる前の記憶だ。童謡の絵本が1…

壊れやすい

インドネシアの大地震。それから火事で幼児3人が死亡。それから…。ニュースを見ながら青ざめてしまいそうになる。 以前に、イラク戦争の空爆で自宅を壊され、子ども3人を殺された男が、子どもがどんなふうに死んでいたかを語ったあとに (それはとてもむご…

女王が踊るよ

あの夏、避難センターの子どもたちと、「女王が踊るよ」と歌いながら、ミストラルの詩を思い出していた。といっても、長い詩なので、もちろん全部はおぼえていないし、思い出せもしない。ただタイトルと、一番最後のフレーズを、毎日毎日思い出した。 毎日毎…

子どもの歌

もうどの家にも、こいのぼりなんて飾っていないのに、子どもは、こいのぼりが飾ってあった棒を指さしては「こいぼーびー」と言う。また何軒かすぎて、棒を見つけると「こいぼーびー」。 それでもって今ごろになってしきりに「やねよりたかいこいのぼり~」と…

アルカディア

風が吹いて、向かいの山がごうごうと鳴る。雨あがりの木々の緑がはげしくゆれるのを、子どもと見ていた。子どもは「やま、やま、みどり、みどり」としきりに言う。きみの心も風にゆられているみたいに。そうして緑に染まっていくみたいに。 庭の芍薬の赤い花…

娘時代

はじめて入ってみた古本屋。住宅地や畑や工場がまとまりなく雑然とあるような地域に、大きな倉庫に見えたのが、古本屋で、入ってみると、半分はまんがとDVD。4分の一がふつうの本と雑誌、CDとレコード、残り4分の1が衣類と未整理のダンボールの山、…

返還の朝

「今日沖縄が日本に返還されました」とその日の朝、教室に入ってきた担任の教師が言った。5月15日の朝だ。年のいった男の先生で、その後、何度か戦争の頃の話もしてくれたが (絨毯爆撃、という言葉もその先生から聞いた) その朝はずっと、沖縄の話だった…

衣替え

雨があがると、庭の緑は、もう夏の匂いがしている。 庭はすでにジャングルと化している。毎年のことながら、この時期の緑の成長ぶりには圧倒される。 子どもの成長にも。 去年のいまごろ着ていた服はずいぶん着れなくなり、着れるものも、長袖が7分袖に、長…

ほねのみみ

明け方の眠りにまぎれこむように、音楽が聞こえていた。何かのミサ曲のような旋律で、ブルガリアン・ポリフォニーのような女声の声の響き。こんなきれいな音楽をずっと聴いていられるなんて、なんてしあわせだろうと、夢のなかで思っていた。 起きて、もしか…

想定外

なんでこんな手紙が? と思うような手紙が舞い込んでいた。金(ゴールド)を買いませんか、というの。手書きの手紙まで入っている。見積もりによると、いま投資すると、900万が3000万以上になるらしい (もちろん、ならない場合もあるらしい)。たぶん、…

針やはらかに

やわらかな雨が降りつづいている。庭の薔薇のつぼみがふくらみはじめている。 くれなゐの二尺のびたるばらの芽の針やはらかに春雨の降る (正岡子規) 高校1年の現代国語の教科書に載っていた。あのときの短歌の授業は、どういうわけか、出席番号と授業の日と…

亀が歩いていた

アスファルトの道の真ん中を、体長20~30センチもあろうかという亀が歩いていた。 山口まで行くのに、ダムや別荘地があるような山のなかの道を走った。川が流れていて、山の緑がふるえるほどきれいで、楽しいドライブだった。 その山のなかの道を、亀が…

片目つむり

数日前に、近くの公民館の育児サークルに遊びに行ったとき、アンパンマンの人形があって、手を動かすと、目の表情が変わる。開いたり閉じたり泣いたり笑ったりするのだが、ウィンクするというのもあって、子どもはそのウィンクが気になるらしく、しきりに真…

7音の名前

子どもがひとり遊びしながら呪文のようにぶつぶつ言っているのが、まるで宇宙語で宇宙人と通信しているみたいだと思っていたが、よく聞くと、「ペッコペコ」などわかる言葉もある。さらによく聞くと、日本語だ。絵本の文章を、ぶつぶつ暗唱しているのだった…

この調べが何か

夜になって蛙の声がにぎやか。蛙の声にまじって、子どもの夜泣きの声。ほそいきれいな声のすすり泣き。あやして、子どもが泣きやんで眠ると、やがて雨の音。 久しぶりにモンティベルディのミサ曲のCD聴いている。ヘッドホンはきらいなので小さな音で。なん…

西行花伝

『西行花伝』(辻邦生)読了。図書館の本を、何度も貸し出しの延長しながら、子どもに邪魔されながら (最近私が本を開くと、とんできて「ごほん、おしまい」と言い、ぱたんと閉じてしまう。そうして自分の絵本をもってくる) 読み終えた。 「もし御仏の法(のり)…

都忘れ

1日じゅう雨。いまも雨。 庭はぼたんが散って、あやめが咲いた。これがまたひとつだけ。なだれるようなこでまりの傍らには、都忘れの群落が花盛り。 小学生だった頃、デパートの手芸コーナーで、紙の造花をつくるセットが売られていて、ねだって買ってもら…

子どもの複雑

江國香織の『絵本を抱えて部屋のすみへ』(白泉社)は、楽しい読書案内(絵本の)だった。巻末に、五味太郎との対談が収録されていて、思わず、そうそうそうだよね、とうなずいたところがあった。 五味 「子どもの頃はだから、非常に複雑にものを考えてたような…

姫と魔物

ひきつづき、丸山薫の詩について。 「朝鮮」という散文詩は昭和12年に発表されている。 「いつ頃か、姫は走っていた。姫のうしろを魔物がけんめいに追っていた。彼女は逃げながら髪に挿した櫛を抜いてほうった。櫛は魔物との間に、突兀(とつこつ)として三…

きのうにひきつづき。由紀ちゃんの新しい数学のノートの1ページ目に書き写されていた詩。 「嘘」 丸山薫 少年の嘘は さまざまの珍らしい夢をふくみ 波を縫ふ海鳥の白い翼の巧みをもち ちちははもそれに欺(だま)されるときばかりが 少年の眼には世に崇高(け…

病める庭園

中学校の図書館で、由紀ちゃんが、新しいノートの最初のページを見せてくれた。そこには私が貸していた詩集から、丸山薫の「嘘」という詩が書き写されていて、「この詩がよかった」と言って、詩集を返してくれた。丸山薫の詩なら「病める庭園」のほうが私は…

こでまり

ぼたんの花が咲いた。三本あるうちの一本に、たったひとつだけつぼみをつけていた赤いのが。こんなに狭い庭で、なんにも手入れしてないので咲くわけないと思っていたから、たったひとつでも咲いてくれてうれしい。その横ではこでまりの花も咲きはじめた。さ…

君の名前を

2階の窓から見える向かいの森やその向こうの山の新緑が、息を呑むほどきれい。陽にきらきらして、風にゆれるのを、しばらく子どもと一緒に眺めていた。 つるばらの新芽を摘んで塩漬けにしてみたが、これはたいへんおいしい。虫が食べるはずである。もしかし…

市内電車

新緑があんまりきれいで。 緑のなかにハナミズキの白やピンクの花がなんだか夢のように浮かんでいる。すなおに空に向いて。 どこへ行っても人が多いだろうと思いつつ、市内電車に乗りに行くことにした。まず港まで出て、船を見て、(うみうみ、ふねふね、と子…

ミニヨン

どこかへ、お出かけしなければ気がすまないようないい天気。ちびさん、どうしようか。 「君と共にゆかまし」の詩はたぶん、人生で一番最初に読んだ外国の詩のひとつ。小学校の終わり頃、兄がくれた本のなかにゲーテ詩集があった。口絵のカラー写真のヨーロッ…

AとO

春なのに肌寒い日がつづくなあと思っていたら、いきなり暑いような日になって、季節の変化に追いついてゆけない。庭は、サツキとツツジが華やかに赤い花を咲かせて、すっかり様変わりした感じ。木瓜の白い花が緑の葉のかげにしずかに咲いている。ぐみの花が…

ふとん干し

春になったら、天気のよい日に、絶対しなければ、と思いつづけていたふとん干し。午後いっぱい、ふとんを干したり、押し入れを片付けたり。 この家は油断すると、押し入れが黴だらけになる。(そして私は油断しっぱなしなのだ)。ふとんも毛布もシーツもタオル…