この調べが何か


 夜になって蛙の声がにぎやか。蛙の声にまじって、子どもの夜泣きの声。ほそいきれいな声のすすり泣き。あやして、子どもが泣きやんで眠ると、やがて雨の音。
 久しぶりにモンティベルディのミサ曲のCD聴いている。ヘッドホンはきらいなので小さな音で。なんだか、さっきまでの子どもの夜泣きのつづきのような。

  「私の生命をひたして流れる」  タゴール

私の生命をひたして流れるこの調べが何かは、ただ私と私の心だけが知っている。
なぜ私が見つめて待っているか、何を誰に乞うているのかは、私と私の心だけが知っている
朝は戸口に立った友のように微笑し、夕べは森のはずれの一本の花のようにうなだれる
曙とたそがれの空には笛の音が漂っている。それは私の思いを私の労苦からつれ出す
その調べが何であり、誰がそれを吹いているかは、ただ私と私の心だけが知っている。
                       (山室静訳)