針やはらかに


 やわらかな雨が降りつづいている。庭の薔薇のつぼみがふくらみはじめている。

くれなゐの二尺のびたるばらの芽の針やはらかに春雨の降る (正岡子規)

 高校1年の現代国語の教科書に載っていた。あのときの短歌の授業は、どういうわけか、出席番号と授業の日と、数字が妙に重なって、何度も発表の当番がまわってきた。
 もうひとつ当番がまわってきたのが、

のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にゐて足乳根の母は死にたまふなり (斎藤茂吉)

 あのときは、それからたった3年後に、母が死んでしまうなんて夢にも思わずにいた。

 ベランダのこいのぼりが、雨のなかでぐっしょり。晴れたら片付けようと思っているんだけどな。