おやすみの前に


 子どもが毎日遊ぶパズルは4種類、140ピースほど。毎晩これを拾うのがたいへん。私がピースを探すのに、「いっこたりない、いっこたりない」と言っていたからだろう。片付けていると、子どもが「いっこたりない」と笑っている。口真似しているのかと思ったら、ほんとうに1個足りない。でも、今あったのに、なぜないのか。「いっこたりない」とあんまりにこにこ笑っているから、あやしいと思ったら、子どもが背中に隠していた。いつのまに、そんな知恵が。

 お風呂から出て、さあもう寝ようよ、という頃になっても、まだ遊びたい。いったい、朝からずっと、お昼寝もしないで、夕方すこし寝たにしても、どうしてそんなに元気いっぱいで夜遅くまで、起きていられるんですか。明るいと動き回るので電気を消して真っ暗にするけれど、それでもやっぱり動き回る。ようやくあきらめて大人しく横になったと思ったら、突然「やねよりたかい~♪」と歌いだす。つづいて「みっふぃーみっふぃーみっふぃちゃ~ん♪」。
 それからぶつぶつ言い出したので耳をすませると、絵本を暗唱している。昼間読んだアンパンマンの時計の絵本だ。それで「アンパンマンは何時に寝ますか」ときいてみると、「8じ」と答える。「アンパンマンはもうとっくに寝てるよ。おきてるのはきみだけ」(とっくに10時をすぎている)というと、今度は、こねこちゃんの絵本になった。つづいて、あおむしの絵本、ぐりとぐらは一部分だけ、と、覚えているかぎりを暗唱する。

 つまり私は、最近は毎日のように、2歳の子どもに、歌を歌ってもらって、絵本のお話をしてもらって、寝るんでした。うとうとしていると、やがて傍らから小さないびきがして、ああ、やっと寝てくれた。