ふとん干し


 春になったら、天気のよい日に、絶対しなければ、と思いつづけていたふとん干し。午後いっぱい、ふとんを干したり、押し入れを片付けたり。

 この家は油断すると、押し入れが黴だらけになる。(そして私は油断しっぱなしなのだ)。ふとんも毛布もシーツもタオルも、何もかも黴臭くなる。年末の掃除は、黴との闘いなのだが、あれから4か月、寒い冬の間にまたひどいことになっているんではなかろうかと思いつつ、ふだん使わないふとんやらシーツやら、引っ張り出した。
 黴とりシートも敷いているのに、何やら湿っぽくて、やっぱりすこし黴くさい。たちまち洗濯物の山ができた。
 シーツやカバーをはぎとったふとんの、布地のぼろぼろさ加減に、そういえばこれは、私が知人からもらってずっと使っていたふとんだが、知る限り、かれこれ25年は使われてきたと、思い至る。黴くさいよりむしろ埃くさいし、何より25年も使えば、もう十分ではないだろうか。
   捨てさせてもらおう。

 新しい客用のふとんは、義父母がもってきてくれたもので、押し入れに入れていないから、無事。新しいふとんはいいなあ。干したらふわふわにふくらんだ。

 押し入れとベランダを行ったり来たりのママのあとを、じゃまにされながらついてまわっていた子どもが、ふいに「トリ、ナキー」と言い、言われて、ああ、鳥が鳴いてる、と気づいた。窓の外のあざやかな新緑にも。向かいの森(昔は庭だった)に、たくさんのシャガの花が咲いていることにも。