青い象


 向かいの森の新緑がとてもきれいな日だった。夕方、一時雨。夜になってまた雨。

 欲しかった絵本が届いた。うれしい。『ワイルドスミスのABC』(らくだ出版)。
 子どもが生まれて楽しいのは、絵本を買えること。といってもお金はないから、ブックオフで100円になっているか、半額になっているのを物色する。もらえるものはもちろん、なんでももらう。それから、おじいちゃんおばあちゃんを誘って本屋に行って買ってもらう。
 子どもをもつことがあろうなどとは夢にも思わなかった頃に、自分の興味で買ったものや、捨てられるのを見るにしのびなくて拾ってきたのや、そんなものを、子どもが喜んでめくってくれると、拾っておいてよかった、捨てないでよかったと、うれしい。

   欲しい絵本は何十冊もあるが、子どもにかこつけて買おうにも、おのずから限度はあり、絵本よりもキャベツ、絵本よりも卵、の毎日で、新しい本なんか、めったに買えない。それでも買ってしまった『ワイルドスミスのABC』。
 2歳になった子どもが、数字、ひらがなにつづいて、アルファベットをおぼえてしまったので、今、買わなければ買いそこねてしまう、と決心した。
 絵本展か何かで、挿絵の象の絵を見てから、ずっと欲しかったのだ。あの青い象をまた見たかった。彼は、とおいところから歩いてきて、またとおいところへ歩いていく、その一瞬を、画家に呼び出されて、ここにあらわれている、という感じがする。そのあらわれた姿の、存在の深さのような、青の色。

永遠の方角へぐらり動き出すワイルドスミスの絵の青い象 (野樹かずみ)