子どもの歌


 もうどの家にも、こいのぼりなんて飾っていないのに、子どもは、こいのぼりが飾ってあった棒を指さしては「こいぼーびー」と言う。また何軒かすぎて、棒を見つけると「こいぼーびー」。
 それでもって今ごろになってしきりに「やねよりたかいこいのぼり~」と歌うのだ。歌うときは「こいのぼり」とちゃんと言える。

 さいしょに子どもが歌ったのはチューリップが咲いた頃、「さいたさいたちゅーりっぷのはなが」だった。教えてないのに歌うのでびっくりしたけれど、そういえば、ボタンを押すと歌が流れる絵本があった (でももうとっくに壊れている)。それから「こぶた、たぬき、きつね、ねこ」。

 毎日歌って、お遊戯して過ごした夏があった。フィリピンで。
 2000年7月10日に、ゴミ山崩落惨事。数百人以上が崩れたゴミ山の犠牲になった。たくさんの子どもたちも。2週間後、現地にいた。数百人が避難所生活をしていて、人があふれかえっていた。訪ねると、たちまち顔見知りの子どもたちにとりかこまれた。ゴミの山に登ってゴミを拾うこともできないから、子どもたちにはたくさん時間があった。手をつないで輪になって、たったひとつの遊びを繰り返しした。鬼(女王)が輪の中で踊って目隠しして、次の鬼をあてる。
 遊んでいるうちに子どもが増えて、輪がどんどん大きくなっていった。

     つぼみの花 
     ひらいた花
     女王が踊るよ
     腰をゆらして

 同じ旋律でこんな歌もあった。

     私は好き、あの山が
     私は好き、あの漁師が
     私は好き、月の光が
     そして竹が風にゆれるのが

 どうして山に漁師がいるのかと聞いたら、絵を描いて説明された。島国なのだ。山のふもとが海。

   みんな元気でいるだろうか。