さくらサク、さかなサカナイ


 朝起きるなり、子どもは「さかな」と小さく叫んで外に出て行こうとする。ああ、ちびさん。さくらは咲くけど、さかなは咲かないんだよ、と言ってみて、さくらサク、さかなサカナイ、の語呂のよさに、子どもが言葉を取り違えるのも無理ないか、と思った。雨模様の一日。

 昼間、子どもがまとわりついている間は、まず物事は片付かない。先月末から、ニュースレターの作成発送の準備をしているのだけれど、電卓を叩いてあれこれ計算していたものは、全然数字があわず、最初からやりなおすことになったし、封筒の宛名書きは、なんでもない漢字を間違えるし、86の次に89を書いて、しばらく誤りに気づかないし、情けないほど集中力に欠ける。かといって深夜は眠いので、やっぱりあれこれ間違っている。

 昼間は単純作業に限ると、切手を貼っていたら、子どもがそれを欲しがるが、これはママの大事、あげられません。1シート10枚の記念切手だったので、使い終わりのシートの切れ端をあげると、なんとなくそれで納得してくれて、切れ端をちぎって遊んでいた。
 「いち、じゅう、いち、じゅう」と言っていて、あれこれ掛け声をかけながら遊んだりはするけれど、またなんで今日は1と10だけ、と思っていたら、「できた」と立ち上がって、足もとを見ている。カーペットには切手シートの切れ端が、一列に並んでいる。よく見ると、細長い紙くずと、丸い紙くずが交互に並んでいて、ははあ、細長いのが「1」で、丸いのが「0」なんですね。「できた、できた」と得意そう。

 そして、もしかしたらちびさんの人生最初の紙工作かもしれない「作品」は、次の瞬間勢いよく、作者自身によって蹴散らされた。