これが春


 私が咳をすると真似していた子どもが、真似でない咳をはじめて、鼻水も数日出ているし、夕方、小児科医院に連れていく。熱はないし元気だし、たいしたことはなさそう。近所の男の子も来ていて、けっこう混雑していた。
 薬もらってくる。これをのませるのが大変。「ママしゅき、ママしゅき」と大泣き、大暴れ。しゅきでもきらいでもいいから、のみなさい。

 やわらかな雨が降りつづいている。春が待ち遠しい、という気分が相変わらず続いている。向かいの森の桜も散って、山は新緑がきれいで、庭には、木瓜が咲いて、チューリップや勿忘草も咲いて、ツツジやサツキも赤いつぼみを開きはじめて、すっかり春ではあるのだが。日に日に、冬の、寒さの芯のようなものも、融けているようではあるのだが。

    春   芒克(マンク)

太陽はその血液を
危篤の大地に輸血した
大地の体躯に
陽光を流しこんだ
そして死者たちの骨で
緑の枝葉を成長させた
聞きなさい 聞こえた?
死者たちの骨から伸びた枝葉が
花の杯をドンデンドンデンと鳴らしている

これが春だ

 (『億万のかがやく太陽 中国現代詩集』から)