葉っぱ摘み摘み


 昨日、いい天気だったので、子どもの散歩がてら、空き地で、ふきのとうとカラスノエンドウを摘む。カラスノエンドウはおひたしにするとおいしい。子どもは「はっぱつみつみ」と声だけかけてくれるが、自分は葉っぱより落ちているペットボトルのほうに興味がある。ああ、そんなもの、口にくわえてはいけません。
 帰ろうとすると、家とは反対方向に、坂をのぼりだす。やれやれ。角の家の庭に、幼児の乗る車の玩具がある。子どもはそれにひきよせられていくが、その家の犬に吠えられて、泣きそうな顔で引き返してきた。それ以上坂をのぼろうとはせず、おとなしく家に向かって歩いてくれた。その犬が吠えたものだから、つられるようにいっせいに、あちらでもこちらでも、しばらく団地じゅうの犬が吠えていた。こんなに吠えられては、泥棒もやりにくいだろう。

   『空飛ぶベラ』という本を読んでいる。画家マルク・シャガールの妻だった人の書いた本。シャガールとの出会いや、故郷ヴィテブスクの町の少女時代のことがつづられている。こういう本はとても好き。シャガールの挿絵も素敵だ。「春」の章から。

 「なんてうれしいのだろう!ふたたび雪のかわりになつかしい土を踏むのだ。世界じゅうが大地と心をわかちあっているような気がする。四方八方から空は大地を抱きしめ、太陽はふんだんに輝かしい光で祝福している。
 光は、ひと粒の土もあますところなく大地にさしこんで、しみ入り、あたためる。こんなところにもう、ひとにぎりの草がはえているかと思うと、あちらには花のつぼみが顔を出している。太陽は裸の枝をいやして、さわさわゆれる緑色のかわいい葉でくるむ。」
 (『空飛ぶベラ』ベラ・シャガール 池田香代子訳)