荒地


 「四月は残酷極まる月だ」。きっと1度読んだら忘れない、T.S.エリオットの詩の1行。

四月は残酷極まる月だ
リラの花を死んだ土から生み出し
追憶に欲情をかきまぜたり
春の雨で鈍重な草根をふるい起すのだ。
(『荒地』Ι埋葬/西脇順三郎 訳)

 残酷極まる、どんな出来事が、と考えるまもなく、チェルノブィリの事故も4月だったと思いいたる。20年前の4月。私は広島にいて、地元の人たちが、風にのって雲が流れて、こっちのほうにも放射能の雨が降ってくるかもしれないと、言い合っているのを聞いた。
 そして、かの地ではいまも、「死んだ土」から草花が生い育っているのだろう。

 夜になって、また雨。