羽がふる


 昨日は晴れた。とても久しぶりの青空。朝、外に出ようとすると、子どもが「サクラ、ミヨウ」と追ってくる。
 庭に出ると鳥の声に、「トリ、ナキ」と言う。「行く春や鳥啼き魚の目は泪」(芭蕉)とつられて口ずさんで、「行く春」の早さ、庭の草花が日に日に成長していく早さに、なんだか息を呑む思い。
 風が吹いて、向かいの森の桜が、いっせいに花吹雪する。日の光にきらきらする。

羽がふる 春の半島 羽がふる (富沢赤黄男)

 という句を思い出した。

 富沢赤黄男や芝不器男などの同郷の俳人については、中学高校の頃、国語教師がいろいろと話してくれたりしたので、いくつかの俳句は故郷の風景と融けあって、めぐる季節ごとに思い出す。思い出すと、うれしさがこみあげてくるのが「羽がふる」の句。
 胸にひろがるのは、愛媛の南予のほうの、晴れた日の青い海。

 午後、隣町の道の駅まで遊びに行く。小さなすべりだいがあって、夢中になった子どもはなかなか帰ろうとしない。「帰ってケーキ食べよう」といって、すべりだいから引き剥がしたが、帰りの道でも何度も「ケーキ、ケーキ」と確認する。しょうがない、帰ってさっそくホットケーキをつくったことだった。