冬の火事


 凍土に花の咲かずと嘆く半歳はおのれが花である外はなし (中城ふみ子)

 東京より北で暮らしたことはないから、雪のつらさおそろしさは知らない。中城ふみ子のこの歌にこめられた思いの深さも、きっとほんとうにはわからない。一度3月に北海道に行ったとき、一面の雪景色、日中でも氷点下だったのに驚いた。北海道に行く直前には四国に帰っていて、四国では菜の花が盛りだったのだ。

   それにしても、この数日の北国の豪雪の映像には圧倒される。3メートルも4メートルも積もるなんて、想像を越える世界だ。あんなに積もっては、この家だって危ういが、私が子どもの頃、18歳で故郷を離れるまで暮らしていた家なんか、あっけなくつぶれてしまうだろう。

 昭和のはじめ頃にはすでに建っていたという木造二階建て。一軒の家をベニヤ板で仕切って、2家族が住んでいた。家は毎年少しずつ傾き、たてつけが悪くなり、あっちを削ったり、こっちを継ぎ足したりしながら、暮らしていた。台風がくれば雨漏りし、浸水し、冬はすきま風がすごかった。
 道沿いに、同じ頃に建てられただろう、4、5軒つづきの木造平屋の長屋が、何棟もあった。貧しさは覆いようもなく、でも子どもたちはたくさんいた。
 ある年の冬、火事で、ほんの隣の家まで焼けた。長屋が全焼だった。風向きが変わらなければ、私たちの家も焼けていたはずだった。燃える火を見ているのはおそろしかった。近所の大人たちがバケツで水をかけていたが、そんなことで火は消えない。昼間の火事で、犠牲者のいなかったことが幸いだった。

   ニュースは、5人もの子どもが焼死体で発見されたといっていた。胸痛い。かわいそうに!