白バラの祈り


 『白バラの祈り』という映画が東京のほうで上映されているようだ。とても評判みたい。そのうち地方にもくるだろうが、映画館に観にいくのは無理かなあ。ここから市内の映画館に行くのは一日仕事。その間、子どもを預けるところもない。子どもひとり生まれて、こんなに身動きとれなくなるとは思わなかった。

 『白バラの声 ショル兄妹の手紙』(新曜社)は、学生時代の愛読書だった。ナチスに反対して23歳と21歳で処刑されたハンスとゾフィー妹の日記と書簡。ゾフィーの日記の次のくだりは、あのころの私に切実で、いまも忘れがたい。

 「祈ることを教えてください。何も感ずることなく生きつづけるくらいなら、耐えがたい痛みの方がまだましです。燃えるような渇きの方が。痛み、苦しみ、苦痛を求めて祈った方がいい。空しさを感ずるよりは。空しさ。しかも、それを感じながら何の感情ももちえない。そんなのはいやです。」

 「祈ろうとするといつも、ことばがこぼれていってしまう。助けてください! 以外には何も言えなくなってしまうのだ。それ以外のことばで祈ることはできない。それはただ私が、あまりにも卑しくて、まともに祈れる段階にも達していないからだ。だから私は祈る。祈ることを教えてくださいと。(略)
 今日、空はなんと美しかったことか。汚れない木々と草花のすばらしさと美しさ。でも、私は喜べなかった。ひそやかな悲しみが心にあふれて。罪の意識もなく罪に引きこまれていくのだ。私の罪に。」