宛名書き

 数日、ゴミ山のフリースクールのニュースレター発送のための宛名書きをしている。11年前から変わらず、手で書いている。パソコンでやればいいのに、と言われるのだが、それに決してきれいな字ではないのだが、手書きにこだわるには理由があって、手で書かないと、名前を覚えられないのだ。それは昔、高校生の頃に、英文法の構文をさっぱり理解できないので、頭で覚えられないなら手で覚えようと、試験前には数百の構文をひたすら書いて覚えたことと似ている。
 お世話になった人の名前を覚えられないとか、忘れてしまうというのは、おそろしいことなのだが、それでも歳月のなか日常にまぎれて忘れてしまっていたりするから、せめて年に何度か、宛名書きするときは思い出して、私の手で私の頭に刻み込まなければ申し訳ないようで。
 大学ノートの住所録は、何年か使えばぼろぼろになるので、数年ごとに新しいノートに書き写す。この数日、宛名書きの傍ら、書き写した。住所に線が引いてあるのは、引越しか宛先不明。名前に線がひいてあるのは、死者。この数年の間にも何人も亡くなられた。まだお礼を言えていない、まだ全然言い足りていない。でもそれでも間に合わないものは間に合わないのだ。
 そして、もしかしたら今年も、死者に手紙を送ってしまうのかもしれないと思うと、少しおそろしくて心が震える。手紙の向こうで何が起きているかを私は知らない。むろん、知らせてもらういわれもないのだ。
 驚いたことに、これまで何度か、死者から寄付が送られてきたことがある。遺言で御香典が届けられたこともあったし、遺族の方のご配慮で送られてきたことも。そのお金の届いた先では、今年も300人を超える子どもたちが、ABCや九九を習っている。
 
 今週中にはニュースレター発送の予定。今まで送ってない方で、ご希望の方、送ります。paaralang@hotmail.comに連絡ください。パアララン・パンタオのHPは
http://kazu900.hp.infoseek.co.jp/